90,いいねこれ
チュササ討伐と素材確保のために第四大陸にやってきたアジサシは、首尾よくダャの村でネパグオレンジを買い込み、事前に罠や解体作業の場所と道具の準備をしていた。
おおよその飛来地点は把握できており、チュササが群れを成して飛んでくるその道中でネパグオレンジを餌に罠へと誘導する、というのがアジサシのチュササ狩りである。
チュササが罠にかかったらエリオットとコリンがとどめを刺して、セダムが解体を進める。他はみんなその他の細々した仕事をしており、作業は順調に進んでいた。
チグサはチュササが回収された後の罠を再び使える状態に設置し直してそこにネパグオレンジを置くかかりであり、腰に蓋つきの籠を括りつけてネパグオレンジを運んでいるので、時々チュササに狙われている。
狙われたときは走ってエリオットかコリンのところまで向かい仕留めてもらうのだ。罠を設置している範囲はそれほど広くないので、これでどうにかなっている。
仕留めたチュササはアンドレイとカタリナが回収してセダムのところまで運んでいる。ギーネはチグサと同じで罠と餌の再設置、サシャとレウコスは解体作業の終わったチュササをさらに細かく分類したり下処理をしたりする係だ。
そうしてネパグオレンジが無くなってチュササが寄ってこなくなるまで作業を続けたら、あとは解体を終わらせるまでに片付けをする。
あたり一帯にチュササの血がまき散らされてしまっているので、このままにはしておけないのだ。
アジサシの馬車には大量討伐と解体をした後の片付け用魔道具も載せてあるので、それを持ってきてせっせと土地を掃除して回る。
放置していると穢れになりかねないが、これはそれも想定して浄化の魔法が込められている道具なのだ。物理的にも魔法的にも掃除をすれば、土地は綺麗に元通り……とまでは行かないが、少なくとも元の状態と同じくらいの綺麗さにはなる。
罠を設置したりチュササが暴れたりして草の禿げた部分はしょうがない。これは自然の回復力に期待だ。草を生やす魔法もあることにはあるしどうにか出来なくもないが、それを使うとむしろ生えすぎておかしなことになりかねないので、基本は自然に任せるようにとギルドからも言われている。
今回のチュササ大量確保もギルドに報告に行かねば、と今後の予定を脳内で組み立てながら掃除を終えて解体組の方へ向かうと、コリンが何かを頬張っていた。
覗き込むと怒られると思ったのか慌てて身振り手振りでサシャからもらったのだと主張してくる。
「サシャー?これチュササかい?」
「そうだよー。串焼き、団長も食べる?」
「貰おうかな」
全てを保存食にするのも面倒だったのか、それとも単に小腹を空かせたコリンに強請られたのか。
ともかく美味しく仕上げられた串焼きを貰って、チグサはそれを齧った。焼きたてアツアツで噛むと肉汁が溢れ出る。
「美味しい……いいねこれ」
「団長が気に入ったなら、ちょっと多めに作ろうかな。コリンも食べるでしょ?」
「食べます!!!」
元気なお返事に笑い、串焼き用に肉を切り始めたサシャを眺める。串焼きを食べきったら串を炎の中に放り入れ、レウコスの方を見に行くことにした。
レウコスはせっせとチュササの羽根を回収しては洗って整えて布の上に並べている。沢山取れたら売る分だけでなく自分が使う分も確保できるからやっている……と言うよりかは、楽しくて夢中になっているようだ。
「レウコス、調子はどうだい?……レウコス?」
「……お、団長。羽根は良い感じだよ、これで三箱目」
「おや、豊作だ。作業のキリがいいところで串焼きを貰っておいで、美味しいよ」
「はーい」
声をかけただけでは反応しなかったので肩を叩いて意識をこっちに向けさせる。
一度中断させたことで空腹に気付いたようなのでレウコスはこれでいいとして、次はセダムだ。
どうやらアンドレイも一緒に居るようで、皮に残った油や肉を除去しているところだったらしい。
「団長見ろよ、大量だ」
「本当だね。質はどうだい?」
「今年は豊作だな。何枚か使っていいか?」
「いいけど、なにに使うんだい?」
「コリンの防具」
「あぁ、なるほど。任せるよ、他に必要な物があったら言っておくれ」
おそらくレウコスとも相談の上進めるのだろうから、とりあえず許可だけ出しておく。
そして二人にも作業のキリのいいところで串焼きを貰っておいでと声をかけて、下処理を終えた皮を箱にしまっているギーネにも声をかける。
下処理だけでも明日もやって終わるかどうかなので、焦ったり無理を通したりする必要はない。
のんびり丁寧にやっていこう、と最初に声をかけているので、皆そのつもりでいるだろう。
ということで、チグサも串焼きを貰いにいくことにした。
サシャの傍ではコリンとレウコスが串焼きを齧っていたので、そこに並んで腰を下ろして串焼きを貰う。
食べている間にみんなが集まり始めたので、この場で行う必要のある作業が終わった後のことを話し合いながらの食事となり、その後は各自休むことにした。




