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91,おや、珍しい

 チュササの討伐と現地で行う下処理を全て終えた後は、手に入れた素材を種類ごとに分けて箱に収め、全てを馬車に詰め込んで移動を始めた。

 次の行先は第四大陸の三分の一ほどを占める巨大な森の中にある、薬屋・リコリスだ。


 森の中を進めば辿り着くことは難しい薬屋だが、上から行けば森にぽっかりと開いた空間が分かりやすく一切迷うことなく入ることが出来る。

 まぁ、これもこの薬屋の店主が独り立ちする前から知り合いだった縁でこの場所に辿り着くための印を受け取っているから何の障害もない、というだけで、何も知らない者からはこのぽっかり開いた穴も認識が阻害されるらしいが。


 なんであれ、問題なく降りれるのだからあまり深く気にする必要もない。

 そう思って深く仕組みを聞いたりもしていないので、彼女の過保護な保護者達が何かをしたんだろうと思うに留まっている。


「だんちょ、下」

「うん?……おや、珍しい。タイミングが重なったみたいだ」

「どする?」

「そうだねぇ……うーん……よし、ギルドを先にしよう。はんてーん」

「はんてーん」


 見えてきたリコリスの敷地内に、普段はいない馬と人影を見つけた。

 彼のことは知っている。クリソベリルの一員であり、個人的によくこの場所に来ているのも知っている。面識もあるが、それはそれとしてルムとニムのこの姿を見せたことはないのだ。


 日差しの向きがよく、まだリコリスの敷地内にこちらの影が入っていなかったこともあり、気付かれていないものとして馬車を旋回させた。

 そうして来た道を戻り、森の外側で地上に降りる。元々ギルドとリコリスはどちらが先でもよかったので、ここからは陸路で第四大陸のいずれかの国……今回はフォーンに入ることにした。


 予定の変更を団員たちにも通達して、馬たちには足環をつけて茶色に変わった毛並みを撫でる。

 ちょっと長めに撫でていたら早く馬車に乗れとばかりに鼻先で押されてしまったので、大人しく手を放して馬車に戻り、窓を開けて外の景色を眺めることにした。


「リコリスに持っていく分を別にしておいて、ギルドにも皮を少し売ろうか」

「了解。どこらへん持っていく?」

「中間あたりかな。質の良いのはまた別で売ろう」

「じゃあ半分くらい分けとくぞ」

「うん、お願い」


 少しずつでも売って行かないと、他の物を仕入れる隙間がないのだ。

 チュササの素材が予想以上に大量に取れたので、馬車の一階はスペースが中々圧迫されている。

 ちなみにレウコスは早速チュササの羽根を使って何かを作っており、その圧迫されたスペースの中に納まっているので、呼んでも中々出てこなかったりする。


「アンドレーイ?」

「なんだい?」

「ギルドに提出しないといけない書類、これが全部だっけ?」

「箱が空ならそうなんじゃないのかい」


 最近ギルドに寄ってなかったので、もう少し書類が溜まっているかと思っていたのだけれど、思ったよりも量は少ない。

 書いてない何かがあったかな、と記憶を探りにいったチグサを見て、アンドレイは見張り台へと上がっていった。


 可能な限り書類仕事はしたくないのだ。チグサが真面目にやる気になっているのならそれが一番であり、巻き込まれないうちに見張り台に行って見張りの交代をするのである。

 チグサは当然その意図にも気付いているが、今回は何も言わずに見逃すことにした。


「団長?どうしたんです?」

「あぁ、ギーネ。ちょうどいいところに来たね、ちょっと手伝ってくれるかい?」


 代わりにやってきたギーネを捕まえて、アジサシの移動や取得品をメモしている物と書類を見比べて必要書類に不足がないかを確認する。

 一つ一つ指さし確認を進めていくと、二、三枚ほど不足書類が見つかった。


 普段から書類提出が必要になることをやるたびに書いて専用の箱に入れているのだけれど、書き忘れてそのままになっている物があったのだろう。

 面倒くさいなぁ、なんて思いつつギーネにも書き方を覚えてもらうためにと言い訳をして手伝ってもらい、さっさと不足分を書き上げる。


 後回しにするとまた忘れそうだし、そもそも後回しにする時間の余裕もないのだ。

 アジサシの馬車は地上を走っていても普通に早いので、フォーンに着くまでそれほど時間は掛からない。その間に書類を仕上げてしまわないといけない。


「あぁ~……面倒臭い……」

「言ってても終わりませんよ」

「それは分かってるんだけれどね……」


 ギーネに正論でつつかれながら書類を書き上げて、最終確認も終えたらもう一度全てを箱に入れておく。ギルドに行くときはこの箱ごと持っていくのだ。

 今回はギーネも連れて行こうかな、なんてぼんやり予定を考えている間にフォーンが見えてきたので、ギルドへ持っていく荷物の再確認をすることにした。


「よし、アンドレイ店番ね!」

「了解」

「ギーネはボクと行くよ。セダムも一緒にギルド。レウコスは多分動かないよね?」

「……うん、動かない」

「だよねぇ。じゃあレウコスはそのまま馬車に置いていくとして……コリンとサシャは自由行動!欲しい物とかあったら買い出しに行ってきて!」

「じゃあ保存食用の調味料でも買いに行こうかな。コリン、付いてきてくれる?」

「分かりました!」


 カタリナとエリオットは基本的に馬車待機なので、これで全員の予定が決まった。

 問題はないね、ともう一度だけ確認して、ギルドに持っていくものを背負う。そしてフォーンに入り広場で止まった馬車から降りてギルドに向かう。

 どこかの出店から美味しそうな香りが漂ってくるので、用事が済んだら寄ってみてもいいかもしれない。

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