92,フォーンで仕事をしようか
フォーンのギルドで書類の提出をして、顔馴染みの職員にまた溜め込んで……と小言を言われた後。
チュササの素材を買い取りカウンターへ持って行って換金していたセダムとギーネと合流し、ギルドを出た後は寄り道をして屋台で買い食いをしてから馬車に戻った。
チグサたちが戻ってくると、もう既に馬車には他の団員が全員揃っていた。
今日はフォーンに泊まることにしたので日が暮れてきた頃に馬車を動かして宿に向かい、部屋を確保したら夕食を食べに出る。
食べたいものが割れたので二手に別れて各自食べたら宿に集合、ということにして、チグサはギーネ、レウコス、カタリナと共に定食屋にやってきた。
他の五人は飲み屋に行くらしいので、多分遅くまで戻ってこないだろう。
「どこ入る?」
「魚の美味しいところ」
「どこだろうなそれ……」
フォーンはそこそこの頻度で来る国なのである程度定食屋も把握しているが、全てを知っているわけではない。
なんなら前に行った店に再び行こうと思ったら別の店になっていた、なんてこともあるので、とりあえず通りを歩いてみて探す、というのがいつもの流れになりがちだ。
「……ここいい香りする」
「じゃあここにしようか。いいかい?」
「いいよー」
「僕も」
そして適当に歩きながら店を探す場合、人よりも嗅覚の鋭いカタリナが行きたい場所に入ることが多い。こうすると大体外れはないので、いつの間にか出来ていた習慣だ。
定食屋の扉を開けて人数を告げるとテーブルに案内されたので、腰を下ろしてメニューを確認する。
カタリナは焼き魚の定食にすると初めから決めていたようなので、他三人が注文を決めたら店員さんを呼んで注文を済ませ、料理が届くまでのんびり雑談に興じる。
レウコスが今作っている装飾品に関することやら、次の仕入れのことやら、話題はくるくる切り替わる。そうしてあれがしたい、これが見たい、と好き勝手言っている間に料理が届いて、早速手を合わせて食べることにした。
「で、団長。明日は結局どうするの?」
「そうだねぇ……明日はフォーンで仕事をしようか。もう一泊して、その後にリコリスへ」
「分かった」
食べながら直前まで話していた明日の予定を決めきって、ついでにその後はどこかで村巡りでもしようか、とその先の予定までなんとなく決めてしまう。
そうして時折会話をしつつ夕食を食べきったら店を出て宿に戻り、風呂に入って寝支度を整えた。
カタリナは宿の部屋ではなく馬車で寝るので、部屋にはチグサ一人きりだ。
特にすることもないけれど、まだあまり眠くもない。
そんなわけでどうしようかと少し悩み、とりあえずベッドの上で柔軟などやってみることにした。
馬車の中でもたまにやっているのだ。いくらアジサシの馬車が大きいと言っても、走り回れるわけではないので普通に過ごしていると運動不足になる。
その解消のために動きまわらなくても出来る運動というのをアジサシの団員は各自思い立った時にやっていて、チグサがよくやっているのがこの柔軟なのだ。
「うーん……明日は散策にでも行ってみようかな……」
ここ最近一人でフラフラ街中を歩いてみることもしていなかったので、久々に何か掘り出し物がないか見て回るのもいいかもしれない。
なんて考えながら柔軟運動を続けて、程々に疲労がたまり身体が温まったのでベッドに横になった。
この状態でぼーっとしていたら、もしかしたら眠れるかもしれないと思ったのだ。
別に急いで眠らないといけないわけでもないけれど、どうせすることもないので眠れるのなら眠ってしまいたい。
「団長起きてるー?」
「おや、おかえりサシャ。早かったね」
「アンドレイさんとセダムとエリオットは別のお店で飲んでくるってさ。あたしとコリンは先に戻ってきた」
「なるほどね」
ぼーっとしていてもまだすぐには寝れなさそうだな、と思っていたところにサシャが帰ってきたので、身体を起こして出迎える。
サシャとコリンは偶には酒場の味の濃い料理も食べたい、とそちらについて行ったので、飲み直しにいく三人とは別行動にしたのだろう。
コリンについては三人について行かせると途中で寝てしまう可能性も考えて連れて帰ってきた可能性が高い。コリンは満腹の状態で夜遅くまで起きてはいられない質なのだ。
昔はまだ幼いからかと思っていたが、今でもそうなので単に夜更かしが苦手なのだろう。
その分朝起きるのも早いし、日中は誰よりも元気なので悪い事ではないのだ。朝が得意な人間も夜が得意な人間もいる、というただそれだけの話である。
と、そんな話をしている間にサシャは荷物を持って風呂に向かったので、チグサは再びベッドに寝転んだ。
サシャも戻ってきたことだし、暇だからと寝るのはもう少し後にして、明日の予定など決まったことを共有してから寝ることにする。
その前に少しばかり雑談に付き合ってもらおう、なんて考えながら、ぼんやりとサシャが戻ってくるのを待つのだった。




