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86,二日後くらいがいいかなぁ

 夜会から戻ってきた後、チグサとアンドレイは自力では脱げない服をさっさと脱がせてもらってベッドに倒れ込んだ。すべては後回しだ。もう何をする体力も気力も残ってはいない。

 そうして寝て起きた後。チグサが朝いちばんで風呂に入りに行き、戻ってくるとアンドレイが見知らぬ手紙を持ってソファに腰を下ろしていた。


「……誰からだい?」

「タテュル夫人から」

「あぁ、なるほど」


 お邪魔する日程や時間などを知らせる手紙だろう、とほっと胸を撫で下ろしながらアンドレイの対面に腰を下ろすと、読み終えたらしい手紙を渡される。

 その内容を確認しながらちょうど部屋に入ってきたレウコスを捕まえて一緒に行くよと決定事項を伝え、手紙はアンドレイに返した。


「ハシャーマ殿にも確認を取らないとね」

「そうだな」


 タテュル夫人の依頼はミュアザーエフラワーを使った髪飾りの制作までだ。それが終わるまではペルーダに留まることになるので、時間には余裕がある。

 工房巡りはハシャーマ殿のところに行った後になるだろう。ミュアザーエフラワーの件に関しては夜会で話題に出しているので、わざわざ時間を作ってもらったのに品がないなどとは言えない。


「タテュル夫人のお話を伺ってから二日後くらいがいいかなぁ」

「分かった、手紙は書いておく」

「頼むね」


 予定を決めながらタオルで髪の水気を拭きとっていると、部屋にセダムとサシャがやってきた。

 上着を着こんでいるので、どこかに行っていたのかこれから出かけるのだろう。


「おはよう団長、あたしたち外でご飯食べてくるけど、一緒に行く?」

「いや、ボクは宿で食べるよ。二人で行くのかい?」

「ギーネとコリンも一緒。ついでに買い物してくるね」

「分かった、気をつけてね」


 サシャは滞在先の食事処に行くのが好きなので、宿に泊まっている間はこうして出かけていくことがある。それを止めるつもりは全くないので送り出し、セダムが先に誘われたのか、年下組を誘ってからセダムを誘ったのか、とあまり意味のないことを考える。


 年下組を連れ出して食べた事のないものを食べさせるのもサシャの好きなことの一つだ。なのでまぁ、恐らくはそちらを先に誘ったのだろう。

 そしてコリンがセダムを誘った、もしくは護衛がてらと理由をつけてサシャが連れてきた、と。


「なんであれ、楽しそうで何よりだねぇ」

「そうだな」


 チグサは昨日の疲れもあり出かける気にならず今回はついて行かなかったが、一緒に行くときもある。何なら時にはアジサシ全員で出かけることもあるが、第六大陸に留まっている間は少なくとも二人ほど動きたがらないやつが居るので、全員で行くことはないだろう。


 第六大陸から出たらどこかのタイミングで全員で食事に行ってもいいな、なんて考えながら暖炉の前で布に包まれているレウコスの隣に腰を下ろす。

 布に包まれたままで何かをしているようで、手元が見えていないだろうに迷いなく手を動かしている。


「それ、なにを作っているんだい?」

「カタリナ用の耳まで覆える帽子」

「なるほど?」


 そういえばいつだったかにレウコスが自分用の耳当て付きの帽子を編んでいたことがあったけれど、あれのカタリナ用ということだろうか。

 カタリナは既製品でちょうどいい帽子を見つけるのは困難なので、レウコスが編んでいるらしい。まぁ、既製品で良い物があったとしてもレウコスは自分で作ることを選ぶ気もするが。


「カタリナの様子も見てくるかな……」

「髪を乾かしてから行け。風邪ひくぞ」

「はぁい」


 アジサシ馬車の中にいるだろうカタリナは、きっと暖房を抱え込んで丸まっているだろう。

 お昼ご飯に誘いがてら覗きに行こう、と立ち上がったところ、アンドレイから釘を刺されたので座り直す。そしてしっかりと髪の水気を取り切ってから改めて立ち上がった。


 上着も羽織ってから宿の駐車スペースに止めてあるアジサシ馬車に向かい、中に入る。馬車の中は暖かく保たれていたので、暖房たちはフル稼働しているらしい。

 二階に上がると小上がりの雑魚寝スペースで布団にくるまっているカタリナとその傍に座っているアンドレイがいた。


「お、団長か。どうした?」

「そろそろ宿の食堂で昼食を食べるから、一緒にどうかと思ってね。カタリナ、今回まだ馬車から出て来てないだろう?」

「昨日お風呂入りに行った」

「おや、そうだったのかい」


 チグサが夜会に行っている間に、カタリナも宿の大浴場を楽しんでいたらしい。

 それはそれとして馬車からほとんど降りていないのは間違いないようで、エリオットが立ち上がるついでにカタリナを小脇に抱えた。食堂まで連れだすようだ。


「あー」

「そろそろ暖房も一回切らねぇと駄目だろ。その間寒い馬車に居るか?」

「温かいところがいい……」

「よしよし、席を暖炉の傍にしてもらおうね」


 カタリナが行く気になったところでエリオットはカタリナを下ろし、暖房を切ってから行く、とチグサたちを先に行かせた。

 そんなわけで二人で移動し食堂で席を確保したところで、アンドレイとエリオットがレウコスを引っ張ってくる。寒がりたちは第六大陸にいる間は自分で動こうとしないので、食事を取っているかも気にしないといけないのだ。

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