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82,ちょっと辛い!

 宝玉鳥を追い回した翌日は、人目の届かない場所で一日休息を取った。

 そのついでに宝玉の鑑定も行い、宝玉は箱に入れて保管しておくことにしたのだけれど、なにやらレウコスがその箱に飾り彫りを始めたので、箱に入れるのはもう少し後になりそうだ。


 そしてその翌日、出発しようかと思ったが休息が一日では足りないと言われたのでもう一日その場に留まることになり、十分に休んだ後はそろそろ関所の通行止めも解除されているだろう、ということで村を巡りながら再び関所を目指すことになった。


 宝玉鳥を見つけて追い回していた結果元々予定していたへの行商は魚の仕入れ以外全く進んでいないので、関所を目指しつつ積み荷を少し軽くしたいのだ。

 海沿いを進んでいると魚は売れないので、内陸の村を選んで進んでいる。


 道中は相も変わらず平和そのもので、チグサは屋根の上で寝転がって空を眺めていた。

 先ほどまでは本を読んでいたのだけれど、読み終わってしまったので結局いつも通り暇なのだ。

 アンドレイに呆れた目を向けられつつ屋根の上で馬車に揺られ、そうしていくつかの村を経由して関所までやってきた。


「通れそうだね」

「そうだな。このまま第六大陸に入るか?」

「後回しにする理由もないからねぇ」


 この間は通れなかった関所だけれど、今はしっかり開かれていたのでそのまま通過して右手へ進んでいく。次の目的地は第六大陸だ。

 これ以上後回しにする必要もないので、ミュアザーエフラワーを欲しがりそうな工房巡りを早めに終わらせてしまうつもりでいる。


 急がなくとも劣化はしないが、在庫を大量に抱えたままにするのも好ましくないのだ。

 せめて今使っている大きな箱ではなく、もう二回りほど小さな箱一つ分に納まるくらいまでは売ってしまいたい。そこまで減らせば、あとは必要な時に出してくる分として乗せておいて構わない。


「だんちょ、どっちから行く?」

「ペルーダからにしようか」

「あーい」


 第四大陸と第六大陸の間の関所を通過する前に一度馬車を止めて、目的地を明確にしておく。

 そして寒がりたちが第六大陸に入る前にとあれこれ着込んでいるのを眺めつつ、チグサも自分の上着を取りに行くことにした。


 特に寒がりな二人ほどではないけれど、さすがに雪の降る中を進むには薄着過ぎるのだ。

 上着を着た上からいつもの外套を羽織り直して一階に降りると、サシャが何か作業をしていた。

 何かと思ったら、カタリナが寒いというのでホットミルクを作っているらしい。


「もう言ってるのかい」

「言ってる。なんなら一回馬車止めた時から言ってた」

「レウコスは?」

「あそこ。カタちゃんとくっついてた方が温かいからって」

「もう団子になってるのかい……」


 まだ第六大陸には入っていないのだけれど、それでも寒がりたちはもう既にひと塊になって寒さに文句を言っているらしい。

 まあ、本当に寒さが極まってくると文句を言う事すらしなくなるので、まだ元気な方だと思っていていいだろう。


 馬車が動いている間は御者台から動けないカタリナのためにあれこれと防寒設備は整えているのだけれど、それでも寒いものは寒いと。

 そう主張されてはそれはそうかと言うしかないので、ホットミルクでも毛布でも、好きに持っていってもらっても構わない。


 カタリナが移動を拒否すれば動けないのがアジサシだ。そうならないためならば少し時間と手間と金をかけてでも設備は整えるつもりでいるのだ。まあ、もう流石にこれ以上は増やすものもないのだけれど。

 なんて、過去に揃えた防寒設備がフル稼働している御者台を見ながら考えている間にホットミルクが完成したらしい。


「団長も飲む?」

「貰おうかな。ついでに見張り台にも届けてくるよ」

「じゃあお願い」


 移動中に零さないようにと蓋をされたマグカップを三つ受け取り、片手でまとめて持ってはしごを登る。見張り台には現在コリンとアンドレイがいたはずだ。

 もしかしたら順番に降りて休憩しているかも知れないと思っていたけれど、上がってみれば二人ともそこにいたのでマグカップを渡す。


「ホットミルクだってさ」

「あ、ちょっと辛い!」

「スパイスだな」


 勢いよく一口目を飲んだコリンが元気よく叫んだ内容に笑いつつ、チグサも自分の分のホットミルクを口に運ぶ。

 確かに少し辛いが、それでも甘みの方が強く感じる。


 これ以外ではあまり味わう事のない味だけれど、アジサシの団員たちは大体好きな味だ。

 第六大陸に来るたびに飲んでいる気もするが、その時積んであるスパイスの種類やサシャの気分で味付けが変わるので、同じ味を楽しむことは難しいという楽しみもある。


「確かに今回は少し辛めだね」

「後でスパイスの確認してくるか……」


 何が入っているのかと予想してみつつ、飲み切るまで見張り台で外を眺めることにする。

 第六大陸に入ってすぐに雪がちらつき始めたので、もしかしたらペルーダで少し足止めを食らうことになるだろうか。

 チグサとしてはそれでも構わないけれど、そうなると寒がりたちの機嫌が悪くなっていくので天気が回復することを願っておこう。

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