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81,速度上げれるかーい!?

 関所から引き返してきて再び第三大陸の内部へと戻ってきたアジサシ馬車は、予定通りゾタ漁村とエーシャの隠れ里を訪れた後、内海の上を飛んでいた。

 馬車の前方では巨大な鳥が飛んでおり、それを追ってここまで来たのだ。


「どうだいエリオット!狙える!?」

「ここからじゃ当たらんな、そもそもこっちが風下だ」

「カタリナー!速度上げれるかーい!?」

「あいー」


 見張り台で弓を構えて鳥を狙っているエリオットの邪魔にならないように、現在チグサは二階から声を張り上げている。

 アジサシ馬車をもってしても追いつけない巨大鳥の正体は、宝玉鳥と呼ばれている幻獣だ。


 非常に珍しい鳥で、目撃例も過去十年で一件あるかどうかの相手である。

 チグサも本物を見るのは初めてであり、今はぎりぎり追えているが、いつ振り切られるか分からない。

 そんな宝玉鳥は、攻撃されると高純度の魔力を固形にして落とすという特性があった。その特性から名が付けられて、宝玉鳥である。


 ともかく、現在アジサシはその宝玉を入手できないかとあれこれやっている最中なのだ。

 遠距離攻撃の手段がエリオットの弓くらいしかないのでとにかく弓で狙いつつ、どうにか接近できないかと試しているのだが、上手い事距離を保たれてしまっている。


「あぁもう!こっちが加速した分だけ向こうも速度を上げるんじゃ意味がないね!」

「おちょくられてんなぁ」


 隣で見ていたセダムがしみじみと言うのを聞きながら、チグサは懐からタスクを取り出した。やっても意味はないかと思ってここまで魔法は使わずに来たが、追いつけないのならこのまま追っても平行線だ。

 それならば、意味があるかは分からなくとも魔法の一つや二つ使ってみた方がどうにかなる可能性もある。


「狙うなら上から降らせろ」

「分かってる、よ!」


 チグサの魔法の腕はそこまで良くはない。が、見えている対象を狙ってその真上に魔法を展開することくらいは出来る。

 宝玉鳥が飛んでいるのはちょうどチグサの射程範囲内ギリギリのあたりなので、狙い澄まして魔法を練れば、どうにか当たりそうな位置にそれが展開された。


「まあ当たんないけどね!」

「そりゃそうだ!」


 とはいえ、当たるかと言われると当たらない。何せ高速で飛んでいる宝玉鳥だ、魔法の発動を感知して逃げるくらい他愛のない事である。

 が、逃げないといけないものとしては認識されているようだ。まるきり無視される可能性も考えていたので、避けてくれるのならば多少はマシな結果かもしれない。


 そんなわけでめげずに魔法を撃ち続け、少しずつ宝玉鳥を誘導していく。風上に居られると、どうしても矢の威力が落ちる。

 どうにか少しでも相手を風下に押しやってエリオットの攻撃が届くようにしたいのだ。


「あぁ!逃げた!」

「こっちの狙いもバレてんなぁ。どうする団長」

「どうしようねぇ……何か……あ。そういえば前に貰った閃光弾があったね?」

「あぁ、あれか。よし探してくる」

「頼んだよー!」


 風下に追いやろうとしたことはバレて逃げられてしまったので、次の手を考える。

 そうして、以前知り合いの魔道具職人からもらった試作の閃光弾があったことを思い出した。ずっと使い道に困って眠らせていたものだが、今こそ使いどころだろう。


 そんなわけで閃光弾の使用を全員に通達して、うっかり目が潰れないように準備をしてもらう。

 その間にセダムが閃光弾を見つけて持ってきたので、それを見張り台のコリンに渡した。これで動きが止まれば、こちらの攻撃も当たるだろう。


「いきますよー!」


 元気のいいコリンの声が聞こえて、目を覆って待っているとそれでも分かる程の光が放たれる。

 ついでに宝玉鳥の悲鳴も聞こえたので、ダメージは入ったらしい。

 ということで攻撃のために目を開けたのだが……


「あっ!?あれ宝玉!?」

「物理ダメージじゃなくてもいいのかよ!?」

「カタリナー!急降下!!あの玉回収するよー!!」

「あいー」


 目を開けた先で見えたのは、キラキラと輝きながら落ちていく球体だった。宝玉鳥はふらつきながらもどこかへ逃げていくが、もうそれを気にしている場合ではない。

 ぐんと方向を変えた馬車の中で転がらないように適当な場所にしがみ付いて姿勢を保ち、海へと落下していく宝玉を追う。


 見張り台からコリンの悲鳴とエリオットの焦った声が聞こえてくるが、とりあえず無事なようなので後回しだ。きっとまたコリンが見張り台から転がり出そうになったのだろう。

 ついでに下からはサシャとレウコスとギーネが何やら騒いでいる声が聞こえるが、これも一旦後回しにする。きっと積み上げた荷物が崩れかけているのだろう。


 チグサはチグサで片手を放して宝玉に対し魔法を放っているせいで身体が浮き、セダムとアンドレイにやいやい言われているのを無視しているところなのだ。

 そんな大騒ぎな馬車の中を丸っと無視して、カタリナは海面ギリギリで馬車を止め、状態を安定させた。


 チグサが風魔法で包んだおかげで宝玉を追い抜いて海面まで来ているので、あとは宝玉の位置を確認して馬車の位置を調整し、一階の屋根に出て落ちてきた宝玉をキャッチすれば任務完了である。

 色々と大変だったが、苦労しただけの価値はあるものなのでチグサは大満足だ。この後陸地に戻ったら文句と説教が山ほど出て来そうだけれど、それもまあ必要経費と割り切っておこう。

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