77,売り先も考えないとね
ミュアザーエフラワーの採取は二日間に渡って行われ、加工にはさらに二日を費やして、ようやく採取した花をすべて完璧に加工し終えた。
レウコスが加工の成否によって花を三段階に分けたので、最上位のものは外部の工房に売り、それ以外のものはレウコスが好きに加工していい、ということになり、早速レウコスはミュアザーエフラワーを使ってあれこれと作る物を考えている。
「楽しそうだねぇ」
「まあ、数年に一回しか出来ないもんね。で、これどこに持っていくの?」
「とりあえずガルダかな。そろそろ行ってみてもいい頃だろうし」
固定状態が綺麗で数年間その状態を保つミュアザーエフラワーは、一輪だけでもそれなりに高額になる。
なので卸せる工房も限られており、そのうち何軒かがガルダにあるのだ。
ついでに見ておきたい顔もあるし、ひとまず次の目的地は決定でいいだろう。
ということで、アジサシ馬車は再び陸路で第三大陸を目指すことになった。今回はモルモーには寄らず、まっすぐガルダを目指す形だ。
レウコスは最初に作る物を決めたらしく、何やら布を引っ張り出して細工を始めている。
集中してしばらく作業を続ける時の顔をしているので、そっとしておいた方がいいだろう。
全員がそう思っているのか馬車一階の一角が一時的にレウコスの工房になり、そこを避けるようにしていつも以上に二階に人が集まった。
「レウコスはガルダについても降りなさそうだな」
「いや、工房にはついてくるんじゃないかい?」
作業に集中している時のレウコスは、大抵満足するまで馬車から降りもせずに作業を続ける。
そうなるとどこかで仕入れやら商売やらをしていてもお構いなしなのだが、装飾品を扱う工房などに行く予定があるとふらりとついてきたりもするのだ。
そういう品が好きだから作っている、という面が大きいのだろう。
他の人が作った細工品を見るのも楽しいようで、ついてくることは多い。そして大抵その帰り道に新たに布などを買ってきて、自分でも何かしら作り始める。
今回行く予定の工房は、どこもミュアザーエフラワーを卸せる技術力のあるところなので、レウコスが付いてくる可能性は高い。
ずっと馬車に籠って同じ姿勢で作業を続けているとどこかしらに不具合も出るだろうから、出来る事なら連れ出した方がいいだろう。
「それと、レウコスの製作品の売り先も考えないとねぇ」
「そうだな」
考えるべきは装飾品に加工する前のミュアザーエフラワーの事ばかりではない。
今レウコスが作っている物が何なのかは分からないが、ミュアザーエフラワーを使った細工品であることは確かなので、値段はそれなりのものになるだろう。それを売る先も考えないといけないのだ。
どこぞの貴族か富豪か……と、チグサがのんびり考えているとアンドレイが地図を引っ張り出した。
その地図を覗き込んで、あれこれと候補を上げていく。最近行っていないあたりを重点的に巡ってみてもいいか、なんて話になり、話題は次の目的地と経路に移行する。
「フォーンに行ってみるかい。ミュアザーエフラワーの加工品が売れるかは置いておいて、最近行っていなかっただろう」
「そこから……第六大陸か?」
「そうだね。嫌がられるだろうけれど、あそこなら売れるだろうし」
レウコスは絶対に嫌がられるし売買の際も出てくるか怪しいが、それでも第六大陸のペルーダには装飾品類を好んで買ってくれる太客がいるのだ。
今回も持っていけば何かしら買ってくれるだろうし、レウコスがある程度装飾品を作り終わったら向かうとしよう。
なんて話し合っていたら、コリンが地図を覗き込んできた。そして、第六大陸から続く小さな大陸を指さす。
七、と数字の振られたそこは、少し特殊な大陸だ。
「第七大陸にはいかないんですか?最近行ってないですよ!」
「うーん……彼らはミュアザーエフラワーには興味がないだろうからなぁ……」
「そうほいほい行ける場所でもないからね、今回は候補から外すべきだろうな」
チグサとアンドレイが揃ってそう言うと、コリンは納得したのか素直に頷いて身体を引いた。
特に行きたいというわけではなく、ただ疑問だっただけなのだろう。
そんなわけで特に意見はないが会話の内容は気になるらしいコリンを傍らに添えて、今後の予定の話し合いは続く。
陸路で進んでいるので、ガルダに到着するまで後二、三日はあるだろう。
その間に、やりたいことやらやるべきことやら、次に向かうことになりそうな場所やらを全て引っ張り出して経路を考えるのは、暇つぶしだけでなく実益もある。
なんて、じっくり話し合っている間に馬車は進み、予定通り二日と少しでガルダに到着した。
到着時点で日暮れが近かったのでその日は店を開けたりはせずに宿に泊まり、明日からあれこれと用事を済ませることになった。
ちなみにチグサたちがあれこれ話し合っていた間、レウコスはずっと作業を続けており、宿についてもなお作業を続けようとしたので、セダムに担ぎ出されたのだった。




