第16章 森の捜索
「うるせーな、このクソジジー誰が行くかよ」
「お前んとこの娘犯すぞコラ!」
怒号はだんだんとひどくなり、しまいには集まった住民が喧嘩をしだす始末だった。
「神さん、二人だってよ、どういう事だ?」
「さーな、新エネルギーってあのDなんとかってやつと関係あんのかな?」
サブローも健三郎の話を少しづつ思い出していた。
「でさ、見つけたらどうだっていうんだよ?」
「なんか褒美があんのかよ、こら!老いぼれ!」
飛び交う怒号に答えるように、再度拡声器を手にも持つと、「それは今はわからん、おそらく一週間後に発表されるだろう」
「なんだよ、ケチ、なにもねーなら、誰が行くかよ」
「以上だ、もう話す事はない」区長は疲れきった表情でその場を後にした。
「なんだって、それだけかよ、うまいもんでももってこい!」
デスホールの現状はこんなものだった。
いつも生死の瀬戸際で生活を強いられている住人の多くは、あのエンジンマウンテンで低賃金労働を強いられている現状が根底にあった。
誰一人として森の中へ行きたくないのが本音であり、かといって今以上税金を上げられるのもたまったものではなかった。
「俺は行くぜ!ピーター、サブ、お前らどうだ?」
「神さん、行くってやばいよ、あんなところ行ったら死にいくようなもんだろう?」サブローが怖い形相で言った。
「そうだよな、いくら何でも何もわからないまま新エネルギー探せって言われたって、どうすりゃいいかわかんないよ」
ピータも迷いを払拭できずにいた。
「俺は誰も行かなくても、一人で行くさ」
「その新エネルギーってやつを探してやる」
「神さんそんな事いったってどうやって行くんだよ、あんなところまで?」
サブローが言った。
「さーな、一週間後になんか思いつくだろう」
その場では三人の意見はまとまらず、明日金魚屋でもう一度話し合う事だけを告げて分かれた。神風は考えていた。
「新エネルギーって、D-m3なのか?健三郎の言っていた人の心を自由に操る事のできるエネルギーなのか?
どうなるんだ?
そんなもの手に入れたら、俺たちは知らず知らずのうちに誰かに操られて生きていくってことなのか?いや、大衆を動かせるとなると、エゾのやつとんでもない事考えだろうな」
「くっそ〜俺が見つけ出してやる、何が何でもこの惨めな現状を変えてみせる、エゾなんかに支配はさせない」
神風は口にこそ出さなかったが、心の中で燃える何かを押さえて強い信念に変えていた。
「よう凪おはよう、昨日は散々だったな」
次の日、金魚屋に神風が久々にやってきた。
「全く、俺の「隼」丘の上に置きっぱなしで送還されたから身動き取れねーよ」
しかし神風はなぜか明るかった。
「おはよう神さん、こっちも親父に金魚の世話頼んだのはいいけど、見てよこれ、フンがたまっちゃってさ、まったく、毎日底の掃除しといてっていったのに、しばらく僕に任せているもんだからやり方忘れちまっただって、大変だよ朝から」
そこへピーターとサブローもやって来た。
「よう」やって来るなり、二人とも神妙な面持ちだった。
「どうしたんだよ、そんな暗い顔してさ」
「とりあえずみんなで飯食うか?」
「それはいい、神さん先いってて、俺、ほら、これ終わらせないと行けないからさ」三人は凪を残していつもの飲茶街へと歩き出した。




