第14章 エネルギー 完
「うわ、なんだ」
「うぅ、息ができない」
そのまま、レッドは粘液の棒状の物にしがみついたまま前屈みに落下した。
「うぅ」
その棒状の物は、ウシガエルの舌だった。
小さなカエルが自分と同じくらいの大きなバッタを捕らえるように、そのウシガエルは自分よりふた周りほど小さな人間をずるずると引きずり、あっという間にパクッと頭からくわえると、もう一口パクッと大きな口を開いたかと思ったら、口の中へ放り込むように体を飲み込んだ。
タリーはレッドが落ちた衝撃で左側に傾き、斜めに地面へ突っ込んだ。
勢い余って一回転し、木に逆さまの状態で叩き付けられて、荷台に積んでいたガラス管が大きな音を立ててはじけとんだ。
タリーも地面に突っ込んだ衝撃で飛ばされ、地面に叩き付けられてしまった。
「痛ってー、クッソーなんてこった」
タリーは地面に叩き付けられたが擦り傷程度だけでたいした怪我はなく、すぐに起き上がると、落下したレッドを気遣い落ちた方へ探しに行った。
「おい、レッド大丈夫か?返事しろよ」
タリーはレッドが落ちた辺りを探したが人影は見当たらなかった。
「どこだ、おい」
声をかけながら後ろの岩山を見上げると、暗がりの中につるんとした何かが、動いたのが目に留まった。
巨大なウシガエルが瞬きをした眼球だった。
「うわ、なんだ」
この言葉が最後だった。
レッドと同様に粘ついた舌が一瞬にしてタリーの顔面に貼り付いた。
「うえ!」
あまりにも一瞬の出来事で、何が起きたかわからず声も出さず、息もできずもがきにもがいたが、数十秒もするとだらんと両手が下へさがり、同時に膝から地面へ崩れ落ちた。
巨大なウシガエルはその大きな人間の巨体をずるずるとゆっくり引きずると、口を大きく開け、パクッとくわえると、レッドと同じように二口で口の中へと放り込んだ。ゲプっと、一回大きなゲップをした後、何事もなかったようにンモーンモーっと鳴き始めた。
「サブ、うまくいったか」
神風は大きなガラスのはじける音が聴こえただけで、暗がりの様子はわからなかった。
サブローのいる所まで来ると、エアフラクターから降りてサブローに話しかけた。「神さん、すげーよあの巨大なカエル、二人を喰っちまった」
「よく見えなかったけど、長い舌で飛んでいるハエを捕まえるようにして、頭からパクッと飲み込んじまったよ」
サブローとピーターは目を大きく開いたまま、今、目の前で起きた出来事が恐ろしくもあり滑稽でもあるといった表情を浮かべて語りかけた。
まだ心臓がドキドキしていた。
サブローはそれ以上、目前にした光景を話そうとは思わなかった。
「とりあえず戻ろう」
四人はそれぞれの二人にわかれ、真っ暗な進んで来た道を引き返した。
二機は並走しながら健三郎いた建物へ戻って行った。
戻る途中、サブローとピーターは一言も口を開かなかった。
神風もあまりに衝撃的な出来事をそれ以上聞く事もなかった。




