第14章 エネルギー
闇が照らす森の中は真っ暗ではあったが、目が慣れてくると木々の位置関係は割と容易に読み取れた。
二人は崩れかけたブロック塀に身を寄せながら、二人の行動をつぶさに観察し、彼らとの間にある数本の木を介してガラス管を割る方法を考えた。
「凪、俺が先に行っておとりになってあいつらをおびき寄せたら、その間に一体のガラス管をぶち壊してくれ、そうすれば奴らは俺ではなく、凪の方へ戻る、そしたら凪はエアフラクターの方へ向かって逃げて戻る所を俺が拾う」
「そうすればあいつら怒りに任せて追っかけてくるぜ」
「そうだな、ちょっと怖いけどやってみるよ」ふたりはシンプルな方法で二手に分かれる作戦を決行した。
ガサガサ!
「おい、レッド、あそこでなんか音がしたぜ」
「なんだよ、スノーヴィだろどうせ」
「違うって、確かに人のような影があそこの木の間を横切ったんだって」
ガサガサ
「ほ、ほら見ろってば、あそこ」
神風は少しだけ背を丸め、素早く木と木の間を走ってみせた。
わざと草木にふれガサガサと擦れた音が響くように大げさな走り方をした。
彼ら二人のいる場所から二十メートルぐらい離れた場所で、暗い森の中では肉眼でようやく人の形を捕らえる事ができる距離を、三たび足早に往復した。
その音に彼らが気づき、こちらを注意深く観察している様子を神風も伺いながら、こちら側へ動き出すまで、まるで人間か野獣が動いているそぶりを見せた。
「タリー何だあれ、あそこで動いているの?」
「人間か?いや熊じゃねーか、襲ってこねーだろうな」
「おい、撃ち殺しちまえよ」
パンパン、いきなりレッドが発砲した。
神風は、発砲されるのは予想外だったが、ほのかな明かりのある松明の下で動く彼らの挙動は手に取るようにわかったので、さほど狙い撃ちされている事に危険を感じるまでもなかった。
発砲した弾丸は、一発は神風の目の前の木をかすめ遥か奥の木にめり込んだ。
もう一発はどこにも当たる気配もなく、森の奥へと放たれた。
発砲があった直後に神風はわざと草木を揺らし、「う〜、う〜」と弾丸が命中し、うめいているような声を出した。
「レッド、あたったらしいぞ、あのうめき声きいたろ」
「どうだい、ちょろいもんだぜ」
「どんなツラしてるか、拝みに行こうぜ」
「あぁ、いいね」二人はガラス管の中に入れたスノーヴィをつみ込むのを止め、一本の松明をタリーが左手にもち、薮の中をうめき声が聞こえる森の奥へと恐る恐る近づいた。
「今だ」神風は小さな声でタイミングを見計らい、凪に指示を出した。
少し間を置いて、「パリン!」
とガラスが割れる音が森に響いた。
タリーとレッドは「なんだ、今の音は」
と不安げな面持ちで振り返ると、目を細めてスノーヴィを捕らえた場所に目を向けると、もう一発何かが飛んできて、二個目のスノーヴィの入ったガラス管がまた、「パリン」っと割れる音が響いた。
「誰だ!」思わずレッドが声を上げると、二人は神風がいる場所と歩いてきたもとの場所のちょうど中間ぐらいの場所で松明を振りかざしながら、キョロキョロと辺りを見回した。
既にその時、神風は自分たちの乗ってきたエアフラクターの止めてあったところまで足音を忍ばせながら戻ってきていた。
凪も二つ目のガラス管を割った後、そっと木陰に隠れるように身を引いた。
「タリー、やられたぞ、誰かいる」
パンパンパン、っと立て続けに三発の銃声を、割れたガラス管に何かを投げつけられた方向へ向かって発砲した。




