第1話
「マー気にすんなって」
けたたましい六機の轟音とどろかせて、ビルの合間を抜けたあと、爆音の衝撃であちらこちらから砂の粒が桜吹雪のように舞った後、小さなコンクリート片がポロポロと落下したかと思った次の瞬間、一気にものすごい轟と共にお互いのビルが寄り重なったと思ったら、くの字にまっぷたつに折れ、畳み込むように森の中へ崩れていった。既に上空へあがった彼らからは、スローモーションのように崩れ落ちる建物からものすごい土煙が上がったのを確認できる程度だった。
「ヒャホォ〜すごかったな、間一髪ってところだぜ」
「危なかったですよ、神さん、オイラが入った瞬間、すぐに崩れかけたんですから、すぐ真後ろに大きな固まりが崩れて落ちてきたんですよ、ほんと、つぶされるかと思いましたよ」
「ま〜ま〜、これが戦闘機の醍醐味ってもんだろ」
興奮して鼻息が荒くなっていたココロに神風が笑いながら話しかけた。大空を飛ぶ六人は、お互いをけなし合い、笑い合ったりしながら徐々にエンジンマウンテンへ近づいていく。
「しっかし、今日はいい天気だな、山の頂まで見えるぜ」
「ああ、不気味な山だぜ、いつ見ても」
「なーココロ、この森には得体の知らない生き物がうようよといるらしいぜ」 「まじかよ、落ちたら食われちまうかもよ」
カイチが面白半分に話す内容に、ピーターも悪ふざけ半分に絡んで来た。
「カイチさん、やめてくださいよ、ちびっちゃうじゃないですか」ワッハハハハ!、全員の高笑いが空一面に響き渡った。
ブロロロロロ〜六機は唯一着陸できる大きな谷間の丘の上へ向かって飛んでいた。「あれ、何だいまの?」
神風は一瞬割れた雲の隙間から何かの残骸が夕日に照らし出され、キラッと光ったのを見逃さなかった。
「何だあれ」雲はあっという間に隙間をとじて、目下の景色は雲の絨毯へと変わっていた。
「飛行機の残骸?最近ほとんど民間機は見かけないしな」
神風が雲の割れ目から一瞬目にした物は、テストフライトの新型旅客機が墜落したものだった。
その機体は墜落して間もない様子で、所々煙がくすぶっていたのだった。
「あった、あそこの丘だ、おりるぞ」
「オッケイ」
「了解」
無線から軽快な返事が返って来た。
その丘の下には幅が数キロメートルもある大地の割れ目が広がり、対岸の先にはあの巨大なエンジンマウンテンと呼ばれる山が一望できた。
六人は一斉にエンジンマウンテンがよく望める丘へ着陸に向かった。
このとき分厚い雲の割れ目から見えた墜落機に気づいたのは神風一人だった。
「風が強いな、おかげですっきりした空だったぜ、ココロ、左翼はどうなった?」「う、うん、ちょっと削れただけで問題ないと思うけど」丘の上は風を遮るものがなく、冷たい風が吹き抜け、谷底まで一気に風が駆け降りていく勢いだった。
みんなが革製のヘルメットを脱ぐと、風にたなびく髪の毛がぼさぼさに渦を巻いた。谷底に見える森の木々は、風のウェイブが幾重にも繰り返していた。
時折吹く突風は足下の小石を谷間まで運ぶと、トントントンっと弾みをつけて遥か底までころげ落ちて行った。
「日が落ちる前に戻らないと危ないですよ、風も強くなってきたみたいですし」「相変わらず心配性だな」
「だ、だってこの辺、奴らも飛んでるし、夜は雲が厚くて真っ暗になりますよ、それに間違って向こうの飛行禁止区域に入ったら、撃ち落とされるって噂ですから」「まー奴らがきたら、叩き潰すまでよ、お礼もかねてね」神風は遠くを見つめながら過去の事を思い出したように言った。
「撃ち落とされる、あの地上から来るあのピカ〜ってやつだろ、あんなの誰もあたったためしないよ」ワハハ!今度は、サブローが答えた。
「そんなこと言ったって」ココロはちょっと不機嫌になっていたが、濁した言葉以上に恐怖心を感じていた。




