第12章 森
「あ、あそこいんじゃないかな」ピーターが指を指して言った。
「良さそうじゃん、休憩だ、休憩だ」
四人は小走りに林を抜け走り出すと、何かにピシッと引っかかって糸のような物が切れた。その瞬間、地面が動いたかと思ったら、大きなネットが四方から一気に袋状になり、先頭を歩いていた神風とサブローがその袋状の網に捕まり、二本の弓状に曲げられていた木の弾力の弾みで、宙へぶら下げられてしまった。
後ろを歩いていたピーターと凪は一瞬びっくりしてのけぞり、同時に倒れ込んでしまった。
「何だこれ!」ピーターが訴えた。
「痛たたた、何だよこれ?」
「サブ痛てーよ、お前の足」
「神さんの足が絡まってるから」
「そんな事いったって、なんだこの網は」
「おい、ピーター、笑ってないで早く降ろせって」
網にかからなかったピーターと凪の二人は、しばらく訳が分からず呆然と立ち尽くしていたが、二人の団子状になった姿を見ておかしくなり、ハッハッハッハ、と思わず笑ってしまった。
「笑い事じゃないって、早くなんとかしろって」
「あーごめん、ちょっと待って、何とかするから」
「えーっと」
二本のロープにつり下げられた網の片方の木に結んであるロープをほどくと、円弧を描くように勢いよく二人は地面に叩き付けられた。
「痛て、痛いって」
「ごめん、引っ張ったらいきなりするっとほどけちゃって」
二人が重すぎたのか、結び目を取るとロープはするするとほどけ、重さでずどんと落っこちたのだ。
「何だよこの網?」
「トラップだろう?」
「動物かなにかのか?」
「まったく、痛てーじゃねーかよ、こんなことしやがって」
「てっことは、誰かが仕掛けたって事だろ、この網を」
「じゃー、人がいるってことか?この辺りに?」
凪がしゃべりながらきょろきょろと見回した。四人は急に口をつむんだ。
「あのビルの中にきっと誰かいるんだな?」「ああ、こんなところで生活してるなんて、まともとは思えないけどな?」
神風も一瞬不安を隠せなかった。
「でもここまで来たら行くしか無いだろう、今の俺たちだって似たり寄ったりだからな」
彼らは慎重に先に見えるビルへ近づいていった。ビル周辺に近づくと、所々に人が歩いた痕跡のある小道ができている。
「やっぱりいるぜ、このビルの中」サブローが吹いた。
「なあ、気をつけろよ」
神風が言った。
数本あるビルの中心に、大きなすり鉢状の階段があり、その中心には噴水らしきものや、ちょろちょろと流れる小川があって、流れ込む小川は何処か階段の上の方から水を上流から引き込んでいるのだろうと思われ、かつてここが集合住宅があった場所であることが伺えた。今は人気も無く静まる返っていたが、四人は辺りを気にしながらも先へ先へと足を踏み入れると、建物の二階らしき窓からこちらを見ている少女がいた。
「神さん、人、あそこ」
とっさに凪が指を指してその少女に目をむけた。
他の三人が振り向くと同時に女の子は柱の陰に隠れてしまった。
「見た、子どもだよ、絶対誰か住んでるよここ」凪が言った。
「そうみたいだな」神風が答えた。
四人は立ち止まり辺りを見渡すが、女の子を見かけた以外、人影は見当たらない。「行ってみようぜ!このビルのなかへ」
「うん」神さんの言葉にみんなは唾を飲んだ。
円錐形の噴水を遠巻きに、一番手前のビルの入り口に来ると、床一面人の足跡がついているのが目に入る。
「いるぜ、かなり」
「そうだな!」
「あの〜、誰かいますか〜」
サブローが建物に響くような大きな声を張り上げた。
「おい、なんだよいきなり」
ピーターが首をつぼめて言った。




