第1話
「よし!これで決まり、いくぜ」
ゴォォォォ〜っという地響きにも似た爆音が響き渡る中、決断するにはあまりにも短い時間だった。
音の反響はどんどん大きくなり、大きなウインドウから落ちかけのガラス片がポロポロと落下し始めるのが所々で見てとれた。
かつて部屋だったであろうその場所からは、大木がくの字を絵描くように空へ空へと曲がりくねって伸びていて、その伸びた枝とツタが絡み合い自由奔放に生い茂る木々は、手を伸ばせば触れそうなところまで迫っていた。
ゴォォォォォ〜
「たまらね〜なこの感覚」
「神さん気をつけろ、接触しら一環お終わりだぞ」
サブローは後方から角度を変えてビルの隙間に突入して行く神風の機体を見つめると、つい大声で怒鳴ってしまった。
「後十メートル」バリバリバリ、ビルの合間に突入した瞬間、轟音が左右のビルに反響し、建物全体がビリビリしびれているかのように、あちこちで小さなコンクリート片が飛び散るのが、遠くからでも見てとれた。
「おぉ!いちゃったよ神さん!スッゲーな、なるほど、角度読み違えると主翼がチップしそうだな!」
「サブ、何ごちゃごちゃ言ってんだよ、この感覚たまんねーぜ」
「ああ、俺もいっちょ、いって見るか」
ブロォォォォォ〜、続いて機体に積まれたロールス製のエンジンが爆音をたなびかせ、サブローも機首を下げた。サブローの機体は神風のものよりひと回り大きめで、2年かけて集めた様々な飛行機のパーツを使ってココロが組上げたオリジナルの機体だった。
翼が神風の隼より左右五十センチほど長く、翼の先端は少しだけ折れ曲った形状をしていた。
「神さんの高度で入るとちょっと危ねーかな?長いんだよな、俺のってさ」
「サブ!なんか言ったか?ぶつぶつなんか聞こえるけど?」
「あ!いや、こっちの話、ほら、あれ、俺のって主翼が長いじゃん、ちょっとだけ神さんのより、だからさ、見てたんだけど、同じ角度で入るとあの垂れ下がったツタを巻き込んじゃうかな〜なんて」
「サブちゃんの、ココロの手作りだもんな!空中分解すんなよ」
ワハハ!
「うるせーな!ピーター、お前のだって同じぽんこつじゃねーか?」
「へへ!」っといつものように右側のほほだけをつり上げた顔をしたピータが、「俺のは優秀なのさ!見た目は悪いけど、中身は最新なんでね」とサブローに言い返した。
「うるせい、今は集中してんだ、黙ってろ、おっと、やべ!後七十メートル、六十メートル、今だ!」
サブローは一気に機体を九十度近く傾け、神風よりやや機体の高度を下げた位置から突っ込んでいった。
また、爆音と共に、パラパラとコンクリート片が粉雪のように舞っていた。
「パチン、パチン!何だよこれ、内側がもう崩れかかってんじゃね〜か」
落ちて来た小さな砂粒がフロントハッチのウインドウガラスにぶつかって左右に散って行った。
ゴォォォォォ〜、バリバリバリ!
「うわ〜、耳痛、すげー音、反響し過ぎだな」
パチン!
「痛たた」
先ほどの轟音とともに神風が通り抜けたことで、また一段とビルは崩れやすくなっていた。
爆音の反響が伝わり、食べかけのウエハースが口元からパラパラこぼれ落ちるように、コンクリート片が建物の隙間からポロポロと落下し、小さな小石ほどの大きさが機体にあたってくだけちり、ハッチの開いた隙間から左のほほめがけて飛んできたのだ。
「ったく、いてーじゃねーかよ、しっかしすげーな、人が住んでいたとは思えね〜なこりゃ」巻き込む風で垂れ下がっていたツタが狂ったように踊った。




