第9章 ジーク
第9章 ジーク
「おい!お前たち、昨日谷底にでかい雷が落ちたろ?」
どんな様子か見て来い。
「わかりました」ジークの手下の二名は、エアフラクターという治安部隊が使用している反重力エネルギーを使用し、浮遊しながらホバークラフトのような巨大なファンの風で移動する事のできる乗り物に乗ると、森の中へ走り去っていった。
その乗り物はもちろん治安部隊から奪った乗り物で、D-m2という半重力エネルギーを搭載した乗り物だ。
ジークとその仲間は元々二区で暮らしていた住人だったが、デスホール内の犯罪では飽き足らず、ディザシティーで窃盗や強奪等を繰り返していた。
悪い事なら何でもやるテロリストを語っていたが、おおよそ思想があるとは思えない、只の暴虐武人な集団の集まりに過ぎなかった。
彼らは森の中の巨大な商業施設群の廃墟を根城にし、闇のルートを通じてディザシティーの組織とつながり、グリーンパラディウムでの反政府組織にも顔が利く程だった。
彼らが根城にするエンジンマウンテンの麓は未だ未開の場所が多く、その大部分をグリーンパラディウムの政府によって立ち入り禁止とされていた。
ジークはまた治安部隊とも衝突を繰り返し、治安部隊もジークの組織を壊滅させようと目論んでいた。
手下の二人はエアフラクターにまたがり廃墟から出た後、熟知した森を走り抜け、時折差し込む木々の木漏れ日を、敵からの襲撃をさけるようにジグザグと時にはオーバーアクションで走り去っていった。
彼らはもちろん、スノーヴィの存在も知っていた。
「おい、タリーよ〜、大きな雷だとさ、珍しいよな、大木にでも落っこちたか?」「ハハハ、ボスは目ざといからな、何かあればすぐに嗅ぎ付ける、ありゃハイエナと一緒だぜ!」
二人乗りのエアフラクターは木々の間を縫うように走っていく。
大きな谷へ通じる道も彼らは熟知していた。
切り立った岩山が並ぶ、鬼の洗濯岩と言わんばかりの突き出た隙間を、くねくねと器用に勢いよくターンを繰り返しながら抜けていく。
「レッド、やめろって、振り落とされるだろ」
「こんなところちょろいもんだぜ」
「な〜タリー、ここを下れば谷の下へ出る、お前知ってるか?」
「馬鹿やろ〜俺がお前に教えたんだろ」
「ハハ、そうだっけ?」坂の下の切り立った道を下ると、入り組んだ小さな岩山地帯に出た。
先ほどまでの尖った岩というよりは、砂岩の体積が浸食によって滑らかに溶けたアイスのような形状の山が連なってる。
わりと開けた場所もあり、見通しが少しきく場所だった。




