第5章 飲茶屋の話
「よ!遅くなった!わりわり」っと神風はみんなに声をかけた。
「お!待ってたぜ」
「よ!」
「どうも!」
「あれ!ココロはまだ来てないの」
「さあ〜、一緒に来るのかと思ったぜ、またあいついつもの事だからどっかより道してんだろ」
「あ〜食ったぜ、腹一杯だ、あ〜俺ちょっとトイレ」
サブローは特にココロの事を気にもかけずトイレへ行ってしまった。
「な〜ピーター、なんか聞いてないのかココロから?」
「いや?」
「カイチも?」
「うん、何も、昨日の帰りになんかすごく興奮していたからさ、眠れなくて寝坊してんのかな?」
「そんならいーんだけど」
神風は少しだけ気にかかっている事が頭をよぎった。
昨日墜落機の話をした時、やけに「それで、それで、」と、詳しく聞き返したり、妙にそわそわしていたからだった。
「な〜、あいつ一人で外でてったりしないよな?」他の二人は薄ら笑いを浮かべながら四皿目の飲茶を食べていた。
「外は暑いよ、もうこの時間、あいつ暑がりだから家で寝てんじゃないかな」
「ならいんだけど!」
その場はたわいもない話をかわし、飲茶をしつこく売りつけてくる年配のおばあさんに愛想笑いを浮かべながらさっさと朝食をすませ、神風は立ち上がろうとした時、隣席の話し声が耳に入ってきた。
「今朝よ〜外壁直せてんで、久しぶりに上の天井あがったら、ほら、でっけー山が結構よく見えてさ〜しっかし、でっけ〜よな!あの山、よくもあんなもん作ったもんだなー、全く!と思ってたら、山の方にち〜っちゃな飛行機がとんでったんだけどよ、まった飛行機乗りの悪ガキどもが朝っぱらからまたなんかやらかすんじゃね〜かと思ってさ、最近小競り合いが多いだろ」
「気にすんなよそんなの、あの辺に行くと撃ち落とされんの関の山だ、おめ〜もそんなの見とれてっと、おっこちんぞ!」
「全くだ、足滑らせねーようにしねーとな」
「ワッハッハッハ」
三人は、飲茶をつまむとゲラゲラと笑いをあげた。
「ワハハハ!落ちたら終•わ•り、あの世行きだ」
また、グイッとお酒の入った湯のみを飲み干すと大笑いをした。ワハハハハハ〜
二つ向こうのテーブルから朝一番で仕事を終えた職人らしき人たちが、今日の出来事を話しているのが聞こえてきたのだ。
「ちっちゃな飛行機?」会話を聞いていた訳ではないが、確かにちっちゃい飛行機と言ったフレーズだけが、耳にこびりついた。
思わず手前の椅子を乱雑にはねのけると、神風はその三人の職人のもとへ足早につ寄った。
「あの〜すいません、今ちっちゃい飛行機って言ってませんでした?」
三人は突然会話に入ってきた若造に向けて一斉に顔を向けた。
「おめ〜だれだ」
「あ、いや〜飛行機が大好きなもんで、つい俺も見たくなっちゃって、その!、今そこのテーブルで朝ご飯を食べてたら話が聞こえてきたもんでつい聞きたくなっちゃって」
「なんだおめ〜飛行機見た事ね〜のか?」
ハハハハハ!
また、三人は顔を見合わせて大笑いした。
「ま〜こんな中にいたら空を飛ぶもんなんか見れねーよな」
「かわいそ〜な!、どうせ外にも出た事ないんだろ」
ハハハハハハ!
また、高笑いを始めた。
神風は少々むっとした顔を見せたが、酔っぱらい相手では仕方ないと思い再度聞き返した
「で、飛んでたんですか?」
「おお、飛んでたよ!、うるさく山の方さいったよ、きっと撃ち落とされっから、見てろ」
そう言うと、三人は神風にかまう事をやめ、大笑いした後、また今日の天井修理の大変だった話をし始めた。




