第4章 3人の生存者 完
その女性は翼という高校生で、エゾに仕える幹部の中の一人、三咲総一郎の一人娘だった。
俊平はしばらく翼の手を握りながら声をかけ続けると、何かを訴えたそうだったので、一度手を放し、あたりに散らばっている荷物の中に水が無いか探した。
ネネのとき同様にペットボトルの水はすぐに見つかった。
俊平は翼の頭をそっと抱き上げ、自分のあぐらをかいた足の上に乗せてあげると「痛」っと、翼が声を上げやっと目を覚ました様子だった。
また何度か目をシバだたせ、俊平を見上げて「ここは?どうなったの私?」と声を発した。
「助かったんですよ、あなたも私も」俊平が笑顔で語り返した。
「・・・・」それ以上翼は声が出ない様子で、俊平は持ってきたペットボトルのふたを開けた。
「これ水です、飲みますか?」
俊平はそっと、翼の口元にペットボトルの口を近づけて、水を少しづつ翼にのませてあげた。
「あ痛たた!」っとまた翼が声を上げた。
「ふー・・・ありがとうございます、私どうなったの、一体?」
翼は一口水を飲むと、ようやくふーっと大きなため息の後、詰まっていた言葉をはきだした。
「さー、私にもわからない、墜落した事までは覚えてるんだが、きっとここは森の中だよ」
「そっか、あの時墜落して・・・・でも、生きているのね、私」
「ああ、もう大丈夫だよ、後一人向こうの大きな翼の影におばあさんが一人生きてる」
俊平は、笑顔で答えた。
「それはよかったわ、三人だけ?」
「いや、それはわからない、まだ全部見て回った訳じゃないから」
「そうなんですか」
「起き上がれますか」
翼は外見を見る限り、手足が骨折しているような大きな外傷は見当たらない。
「どこか痛いところない?ゆっくりでいいですから」と俊平が声をかけながら、起き上がる翼を支えるように手を差し伸べると、翼は手足を動かそうとするたびに打ち身による激しい痛みの衝撃が走ったようだった。
ようやく足を横にして座る恰好まで起き上がると「ひどいね」っと一言いうとあたりを見渡し首を横に振った。
「立てますか?一緒に向こうの日陰まで行きましょう」
日が昇につれ、初夏の日照りが時折雲の合間から差し込んでくる。
いつも厚い雲に覆われている上空から時折さす日差しは、夏の暑い日差しに変わりつつあった。




