第4章 3人の生存者
「お、おい、生きてるのか」
とっさに声をかけた。
「あ!、まだ生きている人がいたんだ」
一筋の光が差し込む暗がりの中に、しゃがみ込むように座っていたのは、ネネという七十を過ぎた老婆だった。
「よかった、無事だったんですね、本当によかった」
俊平は胸の奥から感情がこみ上げ、やっと会えた生存者への喜びから、こらえきれず大粒の涙を流したのだった。
「おばあさんしっかりして下さい、しゃべれますか?他にだれか見ましたか?」
しばらくネネは語る事ができずうなだれていた。
俊平は今何か飲み物を探してきますといって、もう一度散乱した墜落現場の荷物から飲み物を探す事にした。
ペットボトルの飲み水は意外と簡単に見つかった。
機内で提供するための大量のペットボトル飲料が散らばっていたのだ。
俊平は自分の飲み水と、ネネの分の二本を拾うともう一度ネネのもとへ戻っていった。
「これ飲んでください、今開けますから」
俊平はボトルを開けて、そっとネネの手に持たせ口元まで運んであげた。
ゆっくりと一口、二口とペットボトルの水を飲むと、ネネがようやく口を開いて「ふ〜ありがとう」と、言葉をかけて来た。
「あなたもよかったですね、助かって、私は気づいたらここへいたから、外がどんなになっているかわからないのよ」
ネネはか細い声でしゃべり始めた。
「水が飲めてほっとしたわ、本当にありがとう、さっきまで喉がつかえて、どうしようもなかったの、それと、左足が折れているらしいのよ」ネネが、自分の状況をしゃべり始めた。
「もう大丈夫ですよ、よかった、ちょっと落ち着いてゆっくり休んでいてください、私は他に生きている人がいないか探してきます、それと何か食べるものあったら探してきますから」
俊平は、ネネとしゃべれた事で少しだけ勇気が湧き、再び残骸だらけのなぎ倒された木々の間をくまなく探して回った。
「誰かいないか?お〜い!」
耳を澄ませるが誰の声も聴こえなかった。
所々に強い衝撃によって掘り返えされた穴の両脇に、こんもりとした土盛りがあった。まるでモグラが掘った穴のように掘返された外側の土盛りは、所々に転々と開いていて、その穴は、飛び跳ねたウサギの足跡のように点在していたので、パッと見ただけでは全体の被害状況を伺うことはできなかった。
大きな穴の開いた窪地をよけながら、盛り土の反対側へ回ると一人の女性が横たわっていた。
一瞬また死体かと思い、そっと声をかけ体を揺すってみた。
「ねえ!君、大丈夫か?」
横を向いた顔には土がかかっていたものの、顔色はよく青ざめた感じは伺えず、俊平は恐る恐る首筋に手を当てると、手指の甲に肌のぬくもりが甲に伝わってきた。「まだ生きてる」俊平はつぶやいた。
手の甲を首筋に当てた感触で、女性がピクっと反応した。目を固く何度か閉じると、まぶしそうにゆっくりと目を開いた。
「大丈夫ですか?目を開けられますか?」
今度は手を動かして、拳を握りしめて、指の感触を探っているような仕草をした。俊平は手を握りもう一度声をかけた。
「大丈夫ですよ、あなた、助かったんですよ!」
優しく声をかけると、少しだけ口元を歪ませて、何度か瞬きをすると目を開いた。まぶしかったのか何度も何度も瞬きを繰り返し、生きている事を実感している様だった。




