第4章 3人の生存者
「助かったんだ」もう一度生きている事を実感した。
深く煙を吸い大きく吐き出すと辺りを見渡した。
「これはひどいな、どうなったんだろう」俊平は昨夜の事を思い出そうとするが、考えれば考えるほど、恐怖心からか頭の中が混乱し頭痛が起こった。
「痛たたた、だめだ、あれから何時間たったんだ?それと、ここは何処なんだいったい、他に誰か生きてる人はいないのか?」ぶつぶつとつぶやきながら起き上がってあたりを見渡した。
朝もやの中にまだくすぶる煙がうっすらと漂っていた。一時間もすると腰の痛みも和らぎ、立って歩けるほどに回復してきたので、体をいたわりながら他の生存者を捜す事にした。
「お〜い、誰かいるか?お〜い」大声を上げて叫んでみたが返答は無かった。
なぎ倒された大木をまたいでいくと、反対側に大木に押しつぶされた女性が上半身をのぞかせていた。その瞬間、ハッとフラッシュバックが起こり、体が小刻みに震えだしたのだ。
「おい、おい、大丈夫か?」 体にかかった土を払いのけ、青ざめた傷だらけのほほを触った瞬間、「冷たい、死んでる」突然俊平の中に熱いものがこみ上げてきてうわ〜っと泣き出してしまった。
「おい!、死ぬなよ、おい!」何回声をかけても、何度体を揺すっても、大木の下敷きになった女性は既に息絶えていた。
しばらくその場に俊平はへたれ込み、涙を拭いながら呆然と座りこんでしまった。「どうしてこんな事になってしまったんだ、誰かいないのかよ」
俊平は感情的な声を荒げた。
「なんて事だ、でもまだいるかもしれない、自分みたいに生きている人間が」
ぼそっとつぶやくと、そっと女性の顔に、近くに散乱していたヘッドレスのカバーの布を覆ってあげ、そっと両手を合わせてあげた。
「こんな事になってしまって、どうか安らかに天国へ行ってださい」
俊平は立ち上がると再び声を上げた。
「お〜い、誰かいたら返事してくれ、生きている事を伝えてくれ!お〜い」
墜落機の残骸が散乱する百メートル足らずの場所を一歩一歩あるいて探した。数メートル先に大きな主翼が突き刺さっている場所が見えた。
ゆっくりと散乱していた木々や荷物を見渡しながら、突き刺さって折れ曲がっている大きな主翼の場所へたどり着いた。「おい、誰かいるか?」
あたりを見回すが、誰も見当たらない。
その時、かすかなチリンっという鈴の音が聞こえてきた。
「ん、鈴の音か、どこからだ?」
耳を澄ませるが、聴こえたのはそれ一度きりだった。
主翼は切り立った崖のように折れ曲がって鋭角な屋根のような形をなしていて、その三角形の内側の空間は、盛り上がった土で入り口がほぼ塞がれている。
俊平は薄暗い中を覗き込むと、かすかに漏れる光が、人影を映し出していた。
「おい、生きてるか?返事をしてくれ」何度か声をかけながら入り口の土を掻き出そうと必死に土と格闘していると、チリンとまた鈴が鳴った。確かに奥に見える人影のあたりから聴こえたのだ。
「生きてるのか?」
慌てて体が入れるぐらいの土を取り除くと、折れ曲がった主翼の中へ入っていった。中に入ると漏れた光に照らされるように、主翼の壁にもたれかかっている老婆が見えた。その手には小さなお守りについていた鈴が、木漏れ日の光にきらっと反射した。




