第4章 3人の生存者
ズドドドドォォォォ〜ン!
それは不意にやってきた。
木々がなぎ倒されような鈍い音がしたかと思った瞬間、体にものすごい衝撃が走った。機体は滑るように谷底の森の中へ墜落した。
木々をなぎ倒し、衝撃で主翼は吹っ飛び、機体も地面に叩き付けられた衝撃でバラバラに散った。
「ギャ〜〜」っと悲鳴が聞こえたのも一瞬だった。
何がなんだかわからない状態が続いた。波際で遊んでいたら、いきなり大きな波にのまれ、天地がわからずもみくちゃになったような感覚だった。
一瞬の出来事だったのか、目の前に落下したスーツケースがスローモーションのようにゆっくりと宙を舞う様子が目にとまった。その瞬間、小さな砂つぶのかけらまでゆっくりと舞い上がっているのが見えた。
ズドドドド〜ン!、
ゴゴゴゴゴゴ〜、
バラバラになった機体は百メートル近くにわたって破片が飛び散り、原型をとどめないまま、墜落してすべてがストップした。
バラバラになった機体は至る所で煙をあげ、すぶっている箇所が何カ所にも点在していた。
「う〜、助けて」風が揺らす森のざわめきと一緒に、かすかに聞こえる人のうめき声がした。
一人、二人、そのうめき声だけでは、生存者がどの位いるのかまで把握する事はできなかった。
真っ暗な闇の中で時間が経つにつれうめき声も小さくなり、風に揺れる森のざわめきだけがなびいていた。翼は一瞬宙を浮いている感覚を味わった。
「私死んだの」
激しくたたきつけらた衝撃で、ほとんどの座席に座っている乗客は外部に投げ出され絶望的な状態であった。
翼も同様に機体の外に投げ出され、散らばった荷物と一緒に地面に叩き付けられた。
「う、痛」
激しい衝撃が体に走った。
その瞬間、気を失い深い暗闇の中へ吸い込まれていった。
墜落した飛行機の周辺では、一晩中うめき声が聴こえていた。
数時間が立ち、朝日が昇り始め森の中に日差しが差し込む頃には、鳥のさえずりだけがこだましていた。
生存は絶望的で、機体は衝撃でバラバラに飛び散り、大きな主翼は木々の間に突き刺さり、無惨にも折れ曲がっていた。
胴体も百メートルにわたってくだけちり、コックピットの一部の大きなリング形状が木々をなぎ倒し、先端部分は土をかぶり斜めに地面へ突き刺さって止まっていた。
翼はシートごと投げ出された衝撃で地面にたたきつけられたが、機体が激しく衝突した際に掘返された土がクッションとなってかなりの衝撃を吸収し、一命を取り留めたのだ。
生存者はその他にネネという老婆が一人と、技術開発者の浜岡俊平という五十代の人物一名、計三名だった。
老婆は左足の関節を骨折していて歩ける状態ではない、奇跡的に助かった三名は朝もやの深々とした森の冷気で凍えるように眠ったままだった。
一番先に目を覚ましたのは浜岡俊平だった。
「痛たたた、俺は・・・助かったのか?」
「ここは・・・あ〜生きてる、俺は生きてるんだ、助かったんだ」
「どうなったんだ一体?痛たたた」
朝もやの中で目が覚めた俊平は、一瞬天国で目を覚ましたのかと思ったが、寒さに身震いし、生きている事をすぐに実感したのだ。
体のあちこちが痛かったが、どうやら擦り傷程度でどこも骨折はしていなかった。起き上がり立って歩こうとしたが、腰に激痛が走り、しばらくその場で天を仰ぎ、生きている実感を味わていた。
ぼーっと何も考えられない状態が十分二十分と過ぎただろうか?
俊平はゆっくり起き上がり腰を押さえながら、確か上着の右サイドポケットに入っていたはずのタバコをゆっくり探るように左手で取り出し、ゆっくりともう一度横になり、天を仰ぎながら一緒に入っていたオイルライターでタバコに火をつけた。カチンとライターのふたを閉じる音を聞いて涙がほほを伝った。




