第4話 3人の生存者
第4章 3人の生存者
「神様、お願いなんとかして!
」翼は両手をこわばらせながら、必死にしがみつき、うつむき加減で両目をつむったまま祈り続けた。
頭の中はぐるぐると不安と期待が入り交じり、動揺を押さえる気持ちは少しの揺れや安定が訪れるたびに入れ替わった。
三咲翼はこの飛行機の開発に携わっている三咲総一郎を父に持ち、今回の搭乗は忙しい父親の代わりに久しぶりのフライトを堪能するようにと、総一郎から招待状を渡され、とても楽しみにしていた旅行だった。
翼は高校二年生の春を迎えたばかりで、この旅行は一人きりで初めて参加する、翼にとっては何もかもドキドキとハラハラの連続の中で起こった不運だった。
「ああこんな事になるなんて、どうして私がこんな目に遭わないといけないの?なんかした私、あーん、もう怖いよ」
「でも、しっかりしないと、絶対に大丈夫、私はまだ生きている、きっと、大丈夫よ、ああなんとかして、揺れ過ぎだってば、誰か、お願い、助けてよ、お願い、神様」
その時だった、ドカーンという、ものすごい爆発音が、後方部から聴こえた瞬間、機体が一気に上空へ突き上げられるように吹き飛ばされた。
「うわ」っと乗客から、一斉に同様の声が上がり、その後一気に垂直になり急降下した。機内はあまりにも衝撃的な出来事で、悲鳴すら発する状況ではなく、ゴーっという凄まじい音が機内を包み込み、気流の変化と、急激な気圧の変化で、誰かの悲鳴も泣き叫ぶ声も耳に届かなかった。
翼は身動きすらできずに目をギュッとつむったまま、吹き飛んだ機体の後方から聞こえてくる風切音をまともに聞き入れるしかなかった。
機体はさらに高度を下げ、厚い雲の中へ入っていった。
「耳がいたい!」
前の席に座っていた人が大きな声で叫んだ。
子供の声らしかった。トーンの高い声の叫びにも似た訴えは、おそらく機体が急激に上下したため、気圧による耳の内部の圧力が膨張、収縮を繰り返したのだろう。翼も同様に耳の痛さを覚えた。
厚い雲を抜け機体は急降下の後、ゆらゆらと木の葉が舞い落ちるように深い谷間へと落下していった。
飛んでいたと言うより、翼の抵抗を受けながらゆっくりと落下していった、と言った様子だった。
機首を上げたかと思ったら今度はさがり、シーソーのような動きを繰り返し行い、その度に轟音の中乗客は悲鳴を上げ、機内は完全なパニック状態に陥り、悲鳴の中にすすり泣く声が入り交じっている。
その出来事から数分とたっていなかったが、翼にはもう既に何時間もこうしているような錯覚を覚えた。
「なんでこんな事になっちゃうの、私死ぬの?やだよ、絶対にやだ、あーお母さん、ごめん、こんな事になっちゃって、お父さんも、ごめんね、せっかくこの飛行機に乗せてくれたのにこんな事になっちゃって、どうしたらいいの私」
不意に両親の顔が浮かび、小さな頃の思い出が頭の中を駆け巡った。
「まだサチに借りたソフト返してないし、来週みんなで女子会やるって言ったじゃん、やだ、やだやだ、絶対にやだよ、こんなの、こわいよなんとかして」「・・・・・・」




