第1話 神風
「ばかやろ!俺は平気だけどよ、心配してやってんだろ」
「神さん、あれは結構ヤバいですよ!」
「なんだなんだ、ココロまで!いやなら先帰ってていいんだぜ」
「後で地上で合おうぜ」「そんな〜神さん、冷たいこと言わないでくださいよ」
「へへ!ココロのポンコツ飛行機じゃ〜すり抜ける前に空中分解しちまうかもな」「ピーターさんまでひどいですよ!皆さんの事心配してるんですから」
残骸から見つけ出した飛行機を彼らは自ら一機一機組上げて大空を飛ぶのが楽しみだった。
六人はそれぞれ裕福な環境で生まれ育ちながらも、現在は共にこの非常な社会に適応しながら、どこかで明るい未来を探していた。
六人の内、五人はあの十一区で生活をし、残る一人は、グリーンパラディウムの中にあるディザシティーの住人で、凪は六人中唯一まともな人間らしい生活をしていた。「お〜い!カイチ君は大丈夫かな?」
「ああ!こんなのいつものことでしょう〜」
「また、強がりいっちゃって」
「あのね〜凪ちゃん、君のようなボンボンにはこのスリルはわかんないと思うけど」「は?僕はスリルなんかなくたって、十分生きていけるからね、君達とは違うのよ」「何だよ、その上から目線は?」
「何だよお前こそ、突っ込めんのかよあそこへ」
「おいおい、お前らいい加減にしろよ、毎回毎回同じパターンの喧嘩やめろって、ったくいいから行きたいやつだけ行くぜ」
ブロロロロ〜神風、サブロー、カイチ、ピーター、ココロの五人は十一区の住人で、後一人は凪。ディザシティーで代々金魚売りの店を営んでいる。
六機の飛行機は、ほとんどが手作りで、父親がかつて飛行機の修理工場を営んでいた。
ココロが中心となってコツコツと組み立てたもで、それぞれの機体は寄せ集めのパーツで出来ており、零戦ベースの物もあれば、ドイツのメッサーシュミットやイタリアのレジアーネ、アメリカのカーチスにロールスのエンジンといった、見た目はちぐはぐで、けして美しく組上げられた飛行機とは言いがたい出来栄だった。
これらの飛行機は、すべて廃墟と化した小さな飛行場に隣接されているアンティークミュージアムから機体を持ち出して組上げた物だった。
しかし、神風の飛行機だけは違っていた。
彼の乗る一式戦闘機「隼」は第二次世界大戦で、特攻隊だった祖先が大切に保管し、親父の代まで密かに小さな飛行場の格納庫に隠していた物を、死に際に神風に譲り渡したものだった。
神風という名前は、特攻隊が大好きだったおじいちゃんがつけてくれた名前。
「今日は絶好調だぜ!」
ゴンゴン!神風は、雲の切れ間から時折見える目下のジャングルに機首を向けると、右手の中指の第2間接でハッチのウインドウを軽くたたいた。
広大な森の中央にそびえ立つあまりにも巨大で不思議な山はエンジンマウンテンと呼ばれる人工の山で、長年にわたり瓦礫や産廃が積み上げられて出来ており、かつては再生エネルギーのリサイクルという名目でうずたかく積まれた山だった。
ただ、リサイクルという目的は政府の表向きの表明で、本当の目的は誰にもわからず、巨大な山とその一帯は立ち入り禁止区域に指定されており、とても謎の多い山である事は確かだった。




