第一章 神風
D-m3
第一章 神風
「ブロロロロロロ〜〜」六人の操縦する飛行機は、大空高く雲の遥か上空を飛行していた。
「今日は珍しく雲の切れ間が多いいな」
「そうだな」
「見ろよ、今日は倒れそうなビルがそこら中によく見えるぜ」
六機の飛行機には、それぞれ神風、サブロー、カイチ、ピーター、凪、ココロの六名が操縦していた。
それぞれがそれぞれの事情を終えると、いつもの場所で集まり、そして、いつも大空を回遊していた。
百年の歳月が作り出した眼下に広がる現風景はほとんどの大地がジャングルと化し、大空に広がる切れ目のない雲は上空からの視界を遮り、容易に地上の姿を見せてはくれない。
特にエンジンマウンテンと呼ばれる、百年の歳月をかけ瓦礫と産廃で作られたこの巨大な山は、まるでシロクマの毛皮のようなもってりとした白く厚い雲を身にまといながら、山の中腹から時折くすぶる煙が、あちらこちらに立ち込めていた。
「くぅ〜っ今日はラッキーだぜ」
「少し高度を下げてみるか?」
「ほら見ろよあそこ、ちょうどいい獲物があるぜ」
目下に広がるジャングルの中には、まるで登山者を拒み続ける切り立った岩山のような朽ちかけのビルが点在している。
かつて高層マンションだったのか、オフィスタワーだったのか、今では想像する陰も見当たらない。
朽ちた巨大な建物は、ヒビの入ったコンクリートの隙間から、タコの足のような根っこが何本もはい出している。
割れた窓から垂れ下がったツタ同士が絡み合い、コンクリートの太く大きな柱は大蛇のような根っこに浸食され、既に森の一部となりかけていた。
「神さん、あれはやべ〜だろ、もうすぐ倒れるぜ」
「おぉ、あれか!へ〜きへ〜き、俺なら行っちゃうけどな」
「お、おい、マジやべ〜ってよ〜」
サブローは神風が見つけた変わり果てた巨大なビルを見て、少々不安げな言を口にした。
彼らはいつも飛行のスリルを味わいながら、腕試しと度胸試しを楽しんでいたのだった。
目の前にそびえ立つ二つの大きな朽ちかけたビルが、まるでお互いが同時にお辞儀をしているかのように、双方向に傾いていて、そのビルとビルの隙間はかろうじて小型機が通過できるスペースを確保している程度に見て取れた。
朽ちかけのビルはお互いがもたれかかるような格好で、クラックの入ったむき出しのコンクリートの隙間から這い出たツタが絡みい、今にもくっついて巨大なツタのアーチを作ろうとしていた。
「よし決めた!俺は先に行くぜ、サブ」
神風はいつも先頭を切って面白そうな事をやらかすのが大好きな性格だった。
さほど大きくない体格は飛行機乗りには適した体格で、何もするにも言い出すのはいつも神風だった。
パサパサとした洗いざらしの髪は襟足まで伸び、その頭には革製のヘルメットをかぶり、ゴーグルをかけ、眼下を見下ろすクリッとした目の奥には鋭さを秘めていた。「待てって神さん、ありゃー壁に接触したら真っ逆さまだぜ」
「あれあれ、サブちゃん、ビビってんじゃね〜だろうな?」
サブローは大柄で、いつも大きな口を開けながら柄の悪いしゃべり方をするのが特徴的な、どことなく骨張っていてゴツゴツした体格の持ち主だった。
神風と幼い頃からの同じ街で暮らし、小さい頃から一緒になってはいつも悪ふざけをしたり、いたずらを仕掛けるのが大好きなガキ大将だったが、何をするにも神風が先を切って仕掛けているのにサブローは大柄なせいかよく目立ので、見つかると必ず怒られるのはサブローが先という理不尽な結末を迎える事が多かった。




