第22章 D-m3
「ねえ、音、音聞いて」翼が立ち止まると耳を澄ませた。
「風の音しか聴こえねーけどな」
サブローが寒さから身震いをすると、辺りの様子を伺った。
「違う、風の音だけじゃないわ、みずが流れる音よ
」それはかすかではあったが、滝のような水が流れ落ちる音が風の音に混じって聴こえた。
「これ見て」
カイチが手に持っていた木の棒を水面に放り投げると、前方に向かってゆっくりと流れ始めた。
流れてる、何処かに排水溝があるのか」神風は暗闇を見つめた。みんなは足早に先へと進むと、水の流れる音が次第に大きくなり、風の音に勝るとも劣らない大きな音となっていった。
突然目の前に巨大なレンガ造りの壁が現れ、その壁の下には人が一人入れる程の穴が一列に数十本並んでいた。
「ここまでか」
「残念」
「これ以上行けねーのかよ、ちきしょう」
その時「怖がらないで平気、先へ進みなさい」
また、風が通り過ぎた。
「ネネ」
翼がトンネルに響くようにネネの名を呼んだ。
「今ネネが先へ進めって」
「この中へか?何処へ通じているかわからないのに入ったら戻れないぜ」
「ああ、確かに今ネネが言ってたな」
神風の耳にもその風の音は聴こえていた。
「本当にネネが言ったの?ただの風じゃなくて?」
ピーターが不安げに言うと、「ここまで来たら行くっきゃねーだろ、こうなったらやけくそだぜ」とサブローは言うと足から勢いよく「先行くぜ」と下へ流れでる排水溝の穴へと入って行った。
「どうする」
「どうするって」
「おまえ先いけよ」
「いいよ、お前いけよ」
凪とカイチが言い争いをしていると、翼が二人の背中を強く押し、「うわぁー」と二人は同時に二つの穴へ滑るように落ちて行った。
「私も行くわ」
「じゃー俺も」
翼とピーターも続いた。
神風はためらっていた訳ではないが、最後までその場に居続けた。
何かここから先へ行けばココロの最後の面影までが風とともに夜空に舞い上がり、消えてなくなってしまう気がして仕方なかったのだ。
「ココロすべてを消そうとしているのか?思い出も何もかも、いつかまた会えるよな、その時まで俺は命を守り抜くよ、ありがとうココロ」そっとつぶやくと静かに穴の中へと吸い込まれていった。




