第22章 D-m3
「急げ、地下へ入るんだ」
もう教会の形は原型をとどめていなかった。
屋根は吹き飛び壁は崩れ始め、世界の終わりを告げるような轟音とともに壁も宙へと舞っていった。
祭壇の裏側の階段を下りると鉄の扉の入り口にたどり着き、重い扉を開くと急いで中へ入った。
けして名曲とは言いがたい、複雑なすきま風の音階が大小鳴り響き、地下の空間には大合唱が起っていた。
「急げ早くなかへ」
六人は扉の中へなだれ込むように入ると、鉄の重たい扉を固く閉ざした。
風の音は一瞬にして遮断されたが地下ではまだ不気味な音がこだましていた。
夜が明けると共に、空は明るく白み始めるが、今日だけは事情が異なっていた。
真っ黒な巨大な渦を巻き、すべての物を飲み込み始めた。
ブラックスノーヴィが、いよいよ生まれようとしていた。
巨大なエネルギーどうしのぶつかり合いは創造を絶するエネルギーを放出し、エンジンマウンテンの上部には巨大な渦のかたまりが起こり、それは巨大な竜巻へと変化したと思ったら轟音とともに地上のすべての物をエンジンマウンテンへと吸い込み始めた。
周辺の木々はなぎ倒され、大空に舞った紙吹雪のように軽々と空を漂っている。
朽ちたビルも重力の法則をまるで無視するかのように軽々と上空へ舞い上がると、巨大な渦の中へと吸い込まれて行った。
グリーンパラディウムも小さな衝突によって亀裂が生じ、徐々に被害が拡大し、吹き荒む風は内部のすべてを吸い上げ大空へと舞い上げた。
大衆は逃げる間もなく、その建物すべてが基礎を残し、形あるものは上空へと舞い上げられ、竜巻の餌食となった。
吹き荒れた風はさらに巨大化し、大地に根付く草木や小石一粒まで吸い上げ、砂漠のような広陵とした砂丘にも似た起伏のある丘だけが永遠とつながりを見せた。
六人は上部の様子をうかがう事は出来なかったが、吹き抜ける風の音がますます強くなるに連れて、想像力は敏感になりつつあった。
「あーぁ、飛行機も今頃は砕け散ったかな」
膝下までつかる下水道を歩きながら、サブローがそう言うと、「このまま帰るとこなくなったらどうなっちゃうんだろう」とピーターも不安な顔をのぞかせていた。
「大丈夫、このぐらい、元気出そうよ」
翼も不安だったが、誰よりも元気に明るく努めていた。
「なー、この右奥ってどうなってんだ」
下水の突き当たりから、右奥は誰も足を踏み入れた事がなかった。真っ暗なトンネルは吸い込まれそうな永遠の道のりにも思えた。
サブローが自分のシャツの袖を破り、そこら中に浮いている木片を一本拾うと巻き付けた。
ライターを取り出し、その破った服をまいた松明に火をつけた。
徐々に辺りが明るく照らし出されると、レンガづくりのトンネルの壁にゆらゆらとも燃える火の揺らぎと自分の陰が怪しく映し出された。
「行って見よう、しばらくうえには上がれない、地下で休めるところを探さなきゃ」
それから一時間は歩いただろうか、みんなの袖はなくなり、サブローは既に上半身はだかになっていた。
「一体何処まで続くんだよこの道は」
曲がりくねりながらも永遠と続く道に終わりがないように思えた。
時折ぽっかりとあいた穴がいくつもあったが、それは水面に少しだけ上部が見えている小さな穴で、何処かへつながっているようだったが、中へ入るには狭すぎる穴だった。




