第3章 金魚屋での話
「はいはい、遅くなりました、で、どの金魚にしましょうか?」
「さっきから声をかけているのに、ちょっと遅いわよ」
まだ母親は腹の虫が治まらないらしく、顔つきがちょっと怒り気味で、「あんた、今の人じゃないね」とぶっきらぼうに話しかけて来た。
「え、ええ、その、彼、昨日から来てもらってるアルバイトなんです」
「そう、なら、仕方ないわね、しかしお宅、金魚だけ売っている割には結構儲かってんのね」
「ふふ、まーいいから、金魚一匹とってあげて」ちょっとだけ嫌みを言ってスッキリすると、口元に薄笑いを浮かべた。
「はい、わかりました」
凪は何もなかったように返事をすると、いつものように細長い網を取り出し金魚をすくってあげた。
「お兄ちゃん、こっちこっち、それじゃないよ、さとみ、このぷくぷくしたのがいいの」
「あ、こいつじゃなくてこっちのかな」意外と金魚はすばしっこかった。
やっとの思いですくい上げた金魚をビニール袋にいれてあげ、サービスに脇に置いてある水槽から水草を二本つまみ金魚と一緒に入れて少女に手渡すと、さとみは大事そうに金魚の入ったビニール袋に鼻をくっつけたまま、いとおしそうに目をまんまるにして覗き込んでいた。
「ありがとう、おにいちゃん、大切にするからね、それと、さとみ、ちゃんとえさあげるから」
さとみは、ニコニコしながら母親と隣の店の前まで歩いた所から、振り返って「ありがとうバイバイ」っと手を振りながら大きな声でお礼をいうと、凪はまんざらでもない笑顔で会釈をした。
「ありがとうございました」今度は奥から声がした。
「凪、俺にコーヒー一杯入れて」
ようやく、いつもの調子に戻ったメンバーに神風が話をきりだした。
「なぁ、聞いてくれよ!」
「ん、なんだよ」
みんなが一斉に話をやめた。
「あのさ」急に小さな声で話す神風。
「さっき着陸した丘に向かう前に俺見たんだ」
「見たって何を」
サブローがなにげに答えると、カイチが「出たのか」すかさず間の手を入れてきた。
「何それ」「ブラック・ナインの奴らか」
今度は五人が一斉に語りかけてきた。
「まぁー聞いいてくれ」
「みんなとあの場所を飛んでいるときに一瞬なんだけど、でかい飛行機の残骸らしい物が雲の間からチラっとだけ見えたんだ、それでみんなと別れたあの後、俺一人でもう一回確かめたくって、雲の下へ行ってみたんだ」神風はあの時分かれて一人行動をとったいきさつを話した。
「もうひと回りって言ったのは、見に行ったってことか?下まで」
「ああ、でな、・・・」
神風はみんなと別れてからの行動をつぶさに話して聞かせた。
どんな色でどんな様子で、何が起こっているようだったか、見た通りの話をみんなに話して聞かせた。
「とりあえず分かれた後、丘に着陸する前の進路をとって戻ってみたんだ、雲の下へ抜けて谷間の南東に五分ぐらい戻ったあたりに小さな煙り上がっていて、その煙の近くまで寄ったらさ、バラバラになった飛行機らしいんだ」
「でも、最近民間の飛行機が飛んだなんて話、新聞にも載っていなかったけどな」凪がコーヒーを運びながら、神風の前へ置くと同時に話しかけて来た。
「オイラの父親の所に未だに部品調達しに来る解体屋のおじさんも最近は小さいのでさえ作るやつ減ってきたって言ってましたよ」ココロが言った。
「ま〜あれだけでかいやつだと、きっとディザシティーのどこかで密かに作っているって感じだろうな?」
「それで、降りたのか、下まで」
「いや!そんな着陸スペースはないから、二度旋回して戻ったんだ、煙があちこちからあがっていたからまだ、墜落してから時間はたってないんだと思うんだけど・・・




