第21章 不思議な出会い
残念だが回復してもまともに元の体には戻れないだろうな」
ココロは黙ってその話を聞きながら、健三郎と神風を交互に見つめていた。
「でも、それでも俺たちは勝たなきゃいけなかったんだ」
「勝負とはそういうものだ、勝者がいれば敗者がいる、彼はかわいそうだがもう少し回復するまでここで面倒を見る事にしよう、君たちは明日朝一番で戻れば正午のタイムリミットまでに間に合うだろう」
その夜みんなはココロが無事に戻った事と念願のD-m3を手に入れた事で大喜びし、健三郎がヤシの木から取って来た大きな実の中にたまったヤシの実のジュースで乾杯した。
「なんかこの水、ちょっと癖有るけどうめーな」
治療を終えたサブローも、始めは恐る恐る飲み始めたが、時間が経つに連れて口元が進んでいった。
上機嫌な神風も晴れ晴れした顔つきで一気に飲み干すと、また赤い玉の話をした。
その夜はそれぞれ今までの出来事を語らい、深い眠りについたが、ただ一人、ココロだけは違っていた。
既に日が上がり、朝日がうっすらと空を覆う雲の切れ間から、時折差し込んでいる。
昨日の興奮もあってか、まだ目を覚ます者はいなかった。
「オイ、そろそろ出発の準備をする時間じゃないのか?」
ソファーや床で寝ていた神風達のところに健三郎が現れた。
「どうやら昨日はよほど楽しかったらしいな」
と笑いながら声をかけると、別の部屋へと行ってしまった。
しばらくして、神風が目を覚ますと、既に翼が身支度をしながら何かを探していた。
「あ、神風君、ねえ、昨日このテーブルの上に赤い玉置いたわよね」
テーブルの上には飲み干したヤシの実や食べカスが散乱し、残り物の食べ物が中央にまとめて置いてあった。
「昨日、この真ん中に置いたわよね」
もう一度起きたばかりの神風に翼は聞いた。
「どうした、腹減ったのか?しっかし昨日は久々に笑ったなー、あ痛たたた、腹筋痛てーや」
「そうじゃなくて、D-m3がないのよ」
「いや、そんなことないだろう」
神風が頭を押さえながら辺りを見回すと、確かに昨日までテーブルの中央に置いてあったはずの赤い玉はなく、そこいら中に散乱した宴の残り物があるだけだった。
「どっかに転がっているだけだよ、サブ、起きろよ」
神風はあまり深く捕らえる事なく、サブローの尻をひと蹴りすると、間を置いてから「痛て」と小さな声が聞こえた。
「ココロ、ちょっと探してくれよ、赤い玉がその辺に転がっちゃったらしいんだ」
神風がココロに声をかけた。昨日飲んでいたテーブルの端には毛布だけがたたんで置いてあり、そこで寝ていたはずのココロの姿は何処にも見当たらなかった。




