第3章 金魚屋での話
ズズズズズ!
金魚屋の一室で先にたどり着いた四人はお茶を飲みながら、今日の出来事を語っていた。
ゴン!
「キャ!なんなのあんた」
四人は店の入り口の方から突然物音がしたのと、誰かが言い争うような声が聞こえたので、一瞬静まり返ったが特別気にかけるでもなくまた話はじめた。
しばらくすると、神風がいきなり柱の横から顔を出し、
「おお!わりわり!遅くなった」
「凪!お客さんだよ」と声をかけてきた。
「え!なに?」
「玄関先に金魚売ってくれってさ、かわいい彼女が来ているぜ」
みんなが苦笑いした。
「ああ、わかった」
「は〜い、少々お待ち下さい」
「・・・」
「あ〜、遅くなったなみんな」
「えっと」神風が話を切り出そうとすると、カイチが「もう外って真っ暗だった?」と先手をきった。
「ああ、外もどこもかも真っ暗だったよ」
「怖かったぜ〜、墓地になんかふわ〜って浮かんでたし」
「やめてくださいよ、神さん、帰れないじゃないですか」冗談まじりの会話に、ココロがすぐに突っ込みを入れて来た。
ワハハハ、一瞬どっと笑いが起こった。
「ココロ恐がりだかんね」
また、どっと笑いが起きた。
ここは、グリーンパラディウムの街の一角。
この街は欲の街と呼ばれていて、あらゆる人間の欲望をかなえるためにエゾが作り出した街なのだ。
街のすべてはエゾによって管理支配され、ここで働く者にとっては欲しい物がすべて手に入れることができるパラダイスなのだ。
しかし、欲に溺れた者はあっという間にあのデスホールへと強制送還され、死の闇が待ってる。
「凪!俺にもコーヒー一杯入れて」
玄関先から足早に戻った凪が、「神さん!三百ルージュですよ」
いきなり顔を近づけて耳元で怒鳴った。
神風は一瞬のけぞると、「何だよ!金とるのか?ケチくせ〜こというなよな」
「何だって買わなければここの中では生きていけないのですよ〜」
「あ〜あ!わかった、わかった、わかったよ」
「で、出世払いするからさ、付けといて!わり〜ね」
「あ!全く、たまると集金怖いですよ〜」
みんなは横目で二人をちらりと見ながらくすくすと苦笑いをしていた。
ここは金魚屋、ディザシティーはいろいろなテーマで構成された街が広がっていて、現在は二十三番目の街が建設されてる。
凪が営む金魚屋は、代々金魚売りと、水槽や金魚の雑貨を売って商売をしている。建物の中には、鉢に入った金魚を鑑賞しながらお茶が飲める八畳ほどのスペースに小さなテーブル二台と椅子六脚が無造作に置いてあり、彼らがここで笑ってお茶を飲んでいても、その姿はごくごくなじみのお客にしかみえなかった。
「相変わらず繁盛してますねーこの街は」
「ココロも隣町だっけ、確か?」
「はい、父親が飛行機の修理工場やっていたのが懐かしいです」
「そっか、みんな懐かしいよな、昔が」この一言でしばらく黙り込み、過去の思い出に浸ってしまった。
それはこの街で過ごした過去の幸せな記憶を思い出してしまったからだった。ここはディザシティーの中のオールドタウンといって、古い日本の時代を再現したエリアになっており、金魚屋もこのエリアで商売を続けているお店の一つなのだ。
野外で生き物が採取できない理由もあってか、結構観賞用に金魚を買っていくお客さんは少なくない。




