第3章 金魚屋での話
小さな懐中電灯は闇を照らし、飛行場に隣接した古い墓地の中を歩きながら、遠くに見える教会へ向かった。
それは、遥か向こうに見える黒く塗りつぶされたシルエットのような建物だった。ギギギギギギ〜
神風は静まり返った教会の正面階段を上ると、すすけた大きな扉の前に立った。「くそ!重てーな、この扉」教会の入口にある朽ちた重たい大きな木の扉を、人が一人通れるだけ開けて中に入ろうとするが、一瞬立ち止まり、そして一度振り向き、暗がりの墓地のあたりを見渡した。
人気がないことを確認すると、そっと影のように扉の隙間から教会の中へ入り込んだ。
「うぇ、ここも真っ暗かよ」真とした冷たい空気が漂う教会は、もう誰も祈りを捧げる者もなく、神風が割れた窓から吹き込んだ小さな砂利つぶを踏みつぶすと、「ジャリ、ジャリ」っと教会中に静かに響き渡った。
「足音ってこんなでかかったけ?」思わず、自分の足音に聞き耳を立てた。
「ジャリジャリ」
「カタン」
「なんだ?」
急に足音とは違う音が遠くで聞こえたので、慌てて持っていたライトを音のする方向へ向けた。
「何だよ、脅かすなよ!」
風が、教会の壊れた窓の外側に、半分朽ちかけた木の扉が揺れて軽くぶつかったのだ。
「脅かしやがって、うぅ〜早く行こ」
神風は一瞬身震いすると、小さな小声でつぶやいた。
教会の祭壇の裏側から地下へ通じる階段をおりると、いくつかの古い石棺の部屋があり、その一番奥の石棺のほこらの手前に高さ一メートルぐらいのさびた鉄の扉がある。
その扉を開くとさらに狭い階段が地下へつながっていた。
神風は腰を屈めながら階段を下りると地下水道の大きなアーチ型の天井になっているトンネルへとつながっていた。
その場所へ降り立つとそこから数百メートル、アーチ型をしたトンネルは、足のくるぶしまで水のたまった古い地下水道になっている。
ここをまっすぐ通り抜けると突然行き止まりとなり、水は急勾配の細い数本の丸い穴へと流れ込み、かなり深くまで落ちる水の音が響き渡っている。その突き当たりの壁には一段高い段差があり、人がやっと歩く歩けるほどの歩道があるのだ。
突き当たりから左右にのびたトンネルも、レンガで作られた古いアーチ型が遠くまで続いていて、その先へは神風も他の誰も進んだことはなかった。
突き当たったレンガ壁の腰の高さくらいの場所に、突然ぽっかりと開けられた穴が空いていて、人が屈んで通り抜けれるほどのその穴の中に、廃材で作られた小さな階段が上へ上へとのびていた。
ここでも神風は一度立ち止まり、すっかり暗闇になれた目をこらしながら、左右をキョロキョロと見渡し、人がいないことを確認した後中へは入っていった。
「よし、ここまでくれば大丈夫」
また、小さな声でつぶやいた。小型のライトが小さなでこぼこの階段を一歩一歩照らし出してる。
階段を二十メートルもあがった所にベニヤ板で塞がれた天井扉がうっすら見えてきた。トンネルの行き止まりまでくると、正面にあるベニヤ板を頭の後方までスライドさせ、さらにその上まで這い上がると、奥が一畳ほどの床下収納の押し入れのような空間がになっている。四つん這いになる格好で、静かにゆっくり足下の扉をスライドさせたて閉じた。
出てきた入り口から一•五畳ほど空間の奥に小さな押し入れ扉があり、かすかに漏れる光とともに遠くから笑い声が聞こえていた。




