第19章 森の秘密 完
ネネは「信じる心を持てば、つかむ事が出来る、彼らにはその信念があるわ、だから、道を開いてあげてほしい」って言ってたかな、もう遠い過去だが、私もあのD-m3の力に魅了されて探したうちの一人だった。
もう二十年以上前の話だがな。
当時、エンジンマウンテンではエゾによる新エネルギーの開発が盛んで、例の失われた記憶を元にいろいろなプロジェクトチームが組まれ、若かりし私もD-m3というエネルギーの事を知った。
そりゃーみんな興奮してD地区の探査に乗り出したよ、それこそ皆野心を持っていたが、結局何も見つからず、そのプロジェクトも一年と三ヶ月で終了した。
しかし、我々はそのエネルギーの持つ力は、D-m1とD-m2とが導きだしてくれると考え、研究に研究を重ね、十五年の歳月を費やした。
しかし、出来上がったのは小さなルビーのような赤い玉が三つ、これが限界だった。
その作られたエネルギーはD-m1,D-m2と相性は良かったが、願っていた力には到底及ばなかった。
おそらく本物は我々が作り上げた赤い玉の百倍、いや千倍の力を持っているだろう、どんなに努力してもそこまでが限界だったんだ。
ま、そんな時代だったんだよ。
あれから誰もそのエネルギーの事に触れようとしなくなった事も事実だ。
それは山を去る原因にもなったからな」
健三郎は話を続けた。
「エネルギー増強は人の心を堕落させ、強欲へと変えてしまう。この開発途中に見つかった過去のエネルギーを利用しようと試みた者も多くいたが、そのおかげで奪い合いが起り、研究者の間でも分裂が生じ多数の死者を出した。その責任を取らされたのが我々だ。すべての物を失いデスホール送りとなった。その時唯一持ち出したのがこれだ」
健三郎は一通りいきさつを話し終えると、襟元からシャツの中へ手を入れると、首にぶら下げていた小さなルビーのような透き通った玉を取り出した。
その玉は、六角形のガラスの筒におさめられ、中で中空に浮いている状態だった。何処までも透き通るその赤い玉は何処か、宇宙の始まりへつながるような深く魅力的な色をしていた。
「これがその我々が開発した、33xネオンデーライトという、限りなくD-m3に近いだろうと考えて作られた物だ。モース硬度はダイヤモンドで十、さらにそれより硬度なローズデイライトの元素を分解し、さらに三十三倍まで硬度を上げネオン原子の特性を組み込む事で、ほとんどこの地球上の重力と空気の圧力の基では一定の比重を保ち、上昇する事もなく、落下する事もない物質を作り出したのだ。この33xは人間の持つ脳波に反応し、赤く不思議な色を発行させる、その発するエネルギーが他のエネルギーと結合することで、人類の創世に近いエネルギーを生み出すという結論に足したのだ。つまり、神に近い存在のエネルギーを作り出すという事だ」
健三郎は話を終えると、「なんて事だ、こんな物を作り出すねんて」と過去を否定するかのような言葉を吐いた。
「まあ、そうはいっても私はもう過去の人間だから今更どうこうなる物でもない、今は我々の未来を案ずるだけだ」ハハハっと健三郎は誰を見る訳でもなくうつろな目をしながら優しく笑った。
「それって、これと同じでしょう」
翼が胸元から取り出したネックレスも同様の物がぶら下がっていた。
「そうか、そうだったか、君は美咲さんの娘さんだったね」
「ちょっと待ってよ、どういう事だよ、よけい分けがわからなくなってきた」
神風は最後の残ったパンをサブローより素早くテーブルのかごから取り上げると、「なんで、翼が持ってるか説明してくれよ」
と言うと、翼が「え!」という顔をすると、健三郎が再び口を開いた。
「美咲さんは今確か金融省のトップだったかな。もともとエゾと一緒に開発の携わっている投資家の一人ですよね、我々は三咲財閥あっての研究員と言っても過言ではないんだ。おおよそ、残りの一つはエゾ本人が持っていて、今もD-m1,D-m2と共に密かに研究しているとは思うがね。今回再び捜索を開始したって事は何かが進展したんだろう」
「まー私はこのペンダントの事はよくわからないけど、父がお守りになるから持っていけって後はネネを信じているからお前の好きなように行動しなさいっていってくれたわ」
「でも、不思議よね、どうやってもずっと浮いてるのよ、この赤い玉」
翼は不思議そうに見つめていると、その脳波を感じ赤くボーッと光りだした。
「ワッ、光ったわ、ほら」翼が見つめると健三郎のもう一つの赤い玉も光りだした。
「不思議、一体なんなんだろうね」翼は目を輝かせながら見つめていた。
やっと、食事を終えて神風とサブローはその先どうするかについて話し合う事にした。この赤い玉が何を意味しているのかをまだ知るよしもなかった。




