第19章 森の秘密
「へ、石炭って名前だバカ、こんな石ころくれてやるさ」
サブローがぼそっと言った。
神風とサブローは石炭を見つけて大喜びをしていたキムとゾフを見ながら、彼らはこれ以上他を探す事はないことを感じた。
未だに謎のD-m3というエネルギーを探すより、まだ利用価値の大きい化石燃料を見つけた事で、あの二人は十分だと考えているに違いないと確信したからだ。
「サブ、もうほっとけって、あいつらはあいつらだ、石炭を見つけて大喜びしてんだよ」
わかってるけどよ、なんかあの態度むかつくんだよな」
「ま、先は長いんだ、そう怒るなって」
サブローはまだ、機嫌が直らないまま森の中を東へと突き進んだ。
いくつか同じような採掘場が点在しているのを見つけたが、キムとゾフの二人組が見つけた場所がこの辺では一番大きな採掘場らしかった。
二人はいくつかの小高い丘を抜けると、生暖かい風が前方から吹いてくるのを感じた。
「なー、この暖かい風って谷から吹き上がってくる風に似てないか」
「それっぽいな、ようやくたどり着いたか」
目の前の木々が急に開けたと思ったら、断崖絶壁の光景が目の前に広がった。
そこは大きな岩が露趣していて、岩の向こう側、遥か彼方にかすんで見えるエンジンマウンテンが見えた。
「やっと来たなここまで」
「相変わらず、すげーなあの山は」
相変わらずとは、靄と雲に覆われ、所々が見え隠れする程度で、山全体の姿を容易に見せてはくれないという意味だろう。
その通り、流れの速い雲が山肌を見せたかと思うと、すぐに覆い隠し、あっという間に視界から消えたかと思うと今度は雲の上から突き出したようにちらりと上部の頂だけが露見した。
谷の下から吹き上げてくる風に神風は妙な懐かしさを覚えた。
「サブ、なんかさ、すべての始まりの時もこの谷を見ていたような気がするよな」「あの時予感があったのかもしれねーな、俺たちって結局この世界から逃げ出す事が出来ねーって事だ。
この森とあの山と過去の人間が作った世界の成れの果て眺めながら新しい世界の創造にかかわらなくちゃ行けねーって言うか、いったいこの世界って何なんだろうな?」
「サブにしてはすげーこと考えるじゃん、俺だって先のことなんか考えてないで、今日生きれればいいじゃんってずっと思っていたけど、よく見ると周りの世界ってどんどん進んでいって、いつの間にか自分たちだけが取り残されていて、いつかその社会の中にいてもいなくても、どっちでもいいやって思う時があったんだけど、今はなんか自分たちが動けば未来が変わりそうな気がするんだよ、まーやって見ねーとわからないけどね、何事もさ」
「ああ、俺もそう思うようになってきた、なんかあの森の上を飛行機でぶっ飛ばしていた頃が懐かしく思えてきたな」
「そうだな、戻ったらまたみんなでぶっ飛ばそうぜ」
二人はお互いの意識を高めながら谷の丘沿いの林をかき分けながら先を急ぎ、辺りが暗くなる前に、以前着陸した小高い丘の上へたどりついた。
何も変わらない風景がそこにあった。夕方になると風向きが変わり、谷底へと吹き込む強い風へと変わっていた。
空のどす黒くぶ厚い雲はいっそう流れの早さを増し、気流の流れが眺めていてもわかる程で、時折遠くの雲の間にぽっかりと穴が空き、きれいなレンブラント光線が差し込む情景が見えた。
その光線は数秒ごとに場所を変え、その度にスポットライトを浴びたように森の木々がきれいな閃光を浴びて鮮やかな色彩を放っていた。




