第19章 森の秘密
すぐにパラシュートのハーネスを外すと、サブローの降下した地点目指して森の中を駆け出した。
「サブ、サブ、何処だ、サブ」神風は草木をかき分け、サブローが先に着地したと思われる地点へ急ぐと、木々の間からかすかに大木の枝にぶら下がる人の姿が見えた。
「サブ、おい、しっかりしろ、大丈夫か?おい」歩み寄りながら何度か声をかけるが、サブローからの返事はなかった。高さにして三メートルほど上部の枝木にぶら下がったまま、サブローは気を失っていた。
森の中へ落下した衝撃で、体中に枝や木の幹でついた擦り傷が顔中にいっぱい付いているのがうかがえた。
神風は急いで木に登ると、引っかかっているパラシュートの一部を慎重にナイフで切り始めた。
サブローの重たい体はズルズルと少しづつ地面に近づいていき、しまいにはナイフを使うまでもなく布が裂けて、ドサっと鈍い音を立てて地面へ落っこちた。
「うー、痛ってーな」
お尻からまともに着地した衝撃で、サブローは目を覚ました。
「おい、サブ、大丈夫か?サブ」
「ああ、神さん、生きてたか、良かった、俺どうなった?」
「どうなったって、いま、下に降ろしてやったんだよ」
「大丈夫か、しっかりしろ、顔傷だらけだぜ」
「痛ったたたた、あー、思い出したよ、目の前に木が迫って来たと思ったら、体のあちこちを殴られた衝撃が走って、それから、その後の事は覚えてないか、しっかし痛ってーな」
サブローは左手でお尻を押さえ、右手でまぶたの上の少し切れて血が流れている箇所を押さえた。
「ま、助かっただけ良かったな、あのままだったら二人とも真っ逆さまだったからな」二人は頭上に広がる空を見上げると、木々の間から大粒の雨が降り注いでいたが、徐々に真っ黒い雲は薄れ、雷の音も距離を感じさせる程遠くに去っていた。「あ〜あ、やっちまったな、せっかくの出発したって言うのによ」
頭を抱えながら、サブローは、森に降り注ぐ大粒の雨に打たれていた。
「まだここからだと丘まで一日はかかりそうだぜ」
「全くだ」
二人はしばらく衝撃の大きさからその場にしゃがみ込むと身動きができなかった。「やばかったな」
二人はようやく口を開くと、「行くか」「あぁ、行くしかない」と立ち上がった。「どうする」
「どうするってこのまま森の中さまようのか?」
サブローは落下した衝撃で右足を痛めていたらしく、少し引きずるような格好で歩き始めた。
「とりあえず、東の方角に谷の裂け目がかすかに見えたから、まずはその方角を目指すしか手はなさそうだ」
「しかし足痛そうだなお前、顔もずいぶんとやられたな」
神風はサブローの顔を見ると、少し笑いをこらえてながら腫れ上がったサブローの左目を見て
「なんか、殴られたみたいな顔してるぜ」
といってこらえていた笑いを漏らしてしまった。
「笑うなって、痛たたた、ま、骨が折れていなかっただけ良かった事にしないと、尻も足も痛てーしまいったぜ」
既に辺りは薄暗くなりかけていた。
「あー、どこかで服乾かさねーと風邪引いちまうな」
「まったくだ、で野営か今日は」
「そうだな、寝る所ならいくらでもありそうじゃん」
神風は前方の集合住宅の跡地を指差した。
「また、巨大ななめくじみてーなの居るかと思うとぞっとするな」
二人は大笑いしながら初日からのアクシデントを受け入れるしかなかった。




