第19章 森の秘密
急ぎ始めたというより、時間との戦いを視野に入れて考え始めたのだった。
「そろそろ行くぜ、サブ、ところでこれ乗れんのか本当に」
「まかしとき、ばっちりだよな、ピーター」
「ええ、まあ、何とかって感じだけどね」神風は少し心もとない感じだったが、何とか二人で出発にまでこぎ着けた。
「よし」
というサブローの気合いのかけ声と同時に、プロペラのローターがうなり声をあげて回り始めた。
バババババ
「いいぞ、今日は回転数も安定している、少々重量オーバーだけどな、まずは飛んでみるしかない」
大きな体のサブローの後ろに詰め込まれるようにして乗り込んだ神風は、「おいこんな状態でずっといたら死んじまうよな」と言いながらもそれ以上手足が動かせる状態ではないことは分かっていた。
「ピーター、翼、後で合流だな」
「神さん」凪が大きな声で呼んだ。
「おー、お前らも後よろしくたのむぜ」
サブローが言った。
「ちぇ、翼ちゃんが行くなら俺がサブの代わりに行きたかったな」っとカイチがぼそっと言うと、「なんか言ったか?」っとピーターが聞き返したが、プロペラの音で何も聴こえなかった。
小さな滑走路をゆっくりと走り出し、タイヤが小さな石を踏みつけるたびに神風のお尻は反動で浮き上がり、ごとんと底に叩き付けられた。
「いて、おいサブ、もっと丁寧に頼むよ」
「はいはい、でもここ砂利だらけだからもうちょっと我慢だな」
少しずつスピードが上がりタイヤがかすかに浮いた。
「よし、行ける、いけいけ」
思わずサブローがうなった。
舵を引き、出力をあげてようやくタイヤは地面を離れ飛び立った。
しかし距離が足りず目前に迫る森の木々に危うく突っ込みそうになったが、タイヤが木の上部をかすめただけで何とか離陸して大空へ飛び立った。
「よっしゃー、何とか飛んだぜ、神さん」
ああ、何とかな、枝に引っかかんなくてよかったよ」
上空へ舞い上がると、左に舵を取り、小さな滑走路で手を降る四人が見えた。
「いよいよだな、まずは丘を目指していくぜ」
サブローの気合いは十分だった。
しかし午後からはいつもの厚い雲に覆われた空は、夏が近づくに連れ、天候が変わりやすくなり、離陸して五分としないうちに真っ黒い雨雲が目の前に立ちはだかった。
「神さん、あれ見ろよ、なんかヤバそうだぜ、真っ黒だ」
「またこんなときに限ってまったく、上か下か、どうする?」
「かなり上も高そうだな、そうするとあまり高度はあげられない、じゃーずぶぬれ覚悟で下いくか」
「そうだな、それしかない」
目先の真っ黒い雲の下は霧でかすんむほど雨が降っているのがわかる。
時折、空に轟く雷雲がその雲の中で暴れていた。
徐々に激しい風が機体に巻き込み始めた。
「うわー、揺れるな、くっそー、まっすぐ飛ばないぜ、この風じゃー」
サブローは操縦桿を握りしめながら、なんとか飛んでいると言った感じだった。「なんでこんな日に大雨が降るかな全く」
「まー仕方ないさ、この雨のおかげで森が潤っているんだから」
神風があきらめたようにまともな言葉を返すと、「分かってるけど、こちとらそれどころじゃねーぞまったく」
その時また大きな雷の音とともに、雷雲の中から稲妻が走り、ぱっと一瞬辺りが明るくなった。
「うわー、やべ、早いとこ抜けないと」
「雨で前方が何も見えないぜ」キャノピーの隙間から入り込む雨で、二人とも既にシャワーを浴びたかのようにびしょぬれになっていた。




