第18章 挑戦
サブローは直立不動の凛とした姿勢を保つと、みなぎる目つきで興奮しきっている様子だった。
「サブ、あんまり興奮すんなって、まだまだ先は長いんだから」
「あはは、そうだった」
サブローは倒れた椅子を戻し、もう一度座り直すと「飛ぶなら明るいうちがいいな、セナのやつもきっと飛びながら同じ事を考えているだろうからな」
「わかってるさ、でも今はあいつらと争っている場合じゃない、どうやってそのエネルギーを見つけるかを考えないといけないってことだ」
「よし、準備ができたら腹ごしらえだ」
「今回は俺、手伝えないけど戻ったら何でもするから」
カイチが申し訳なさそうな顔をして口を開いた。
「僕もなんかできないかな、せめてココロでも探せたらいいんだけどな、あいつジークってやつの所にいるんでしょ」
ピーターはココロの事をいつも気にかけていた。
今回のエネルギー捜索に加わっている事を聞き、自分も行きたい気持ちでいっぱいだったが自分でもどうしたら良いのかわからない状態だった。
「二人はなんかあったら飛んで来てくれればいいさ、いざとなればなんとかなる、な、サブ」
「当たりめーだよ、俺を誰だと思ってんだ、後をたのむぜ、そうとなったら飯だめし」
サブローはまた大声を張り上げると、今度はテーブルに両手をついた。
その衝撃でピーターの飲みかけのコーヒーががたんと小さく揺れると、反動で少しだけテーブルにコーヒーが飛び散った。
その様子をもろともせずに、先程よりいっそう迫力を増したサブローが立ち上がった。
「だからさー、興奮すんなって」
神風の一言にみんなの笑いが起こった。
笑い声を聞いて、凪と翼が入って来た。
「なんか、やらかしたのか」
凪の言葉にサブローが照れ笑いをしながら、椅子を元に戻し「いや、今からみんなで飲茶しようと思ってさ」と言うと、凪の隣にいた翼が「おいしそー、行こう、行こう」っとはしゃぎ始めた。
「なんだよ翼まで、帰った方がいいんじゃないの」っと神風が言うと、「え、いいじゃんいいじゃん翼ちゃんも行こうよ、ね」とさっきまで神妙な顔で語っていたピーターが翼に誘いをかけていた。
「お前、本当に変わり身早いな」
神風がそういうと、また大きな笑いが起こった。
翼を入れた五人はいつもの道を通り、いつもの角を曲がって赤い大きな大弾幕をくぐると、見慣れた飲茶街へと足を踏み入れた。
今日は違うお客さんの足のたもとに、二羽の鶏が絡み合いながらつつき合っているのが見えた。「へー、ここが飲茶街、雑誌に載ってたわ、すごい本物、人だらけ、テレビ見てるみたい、ねーねー凪さんここでみんなでご飯食べるの?なんか冒険に来たって感じ!、感動!どこか、遠い知らない国の奥地を旅してるって感じね〜、すてきだわ〜、ね、そう思わない」
「ええ、まあね、ここで僕たち毎日ご飯食べているんで、何とも」
凪が申し訳なさそうに答えると、「あのね、奥地ってさ、俺たちここだってパラダイスなんですけどね」
神風があきれたようにいった。
「まーいいじゃない、で何処のテーブル、ウエイターさんは何処にいるの」
次々と興味津々の翼が語りかけながら、人が食べる物を見ては「おいしそー」とか、「すごーい」とか、大はしゃぎで、まるで遊園地に初めて来た子供のように振る舞っていた。
「ここの注文の仕方は、あそこにいるおばちゃんがワゴンで色々と小さな蒸篭に乗った食べ物を運んで来てくれるんだ、それを見てあれこれ頼むとテーブルにどんどん置いて行ってくれるってわけ」
「まー翼ちゃん、もっと奥にいってみようよ」
「あいつなんで翼に優しんだ?いつもなら真っ先にキレるくせになあ」
神風はピーターが世話をしているのを見て、少々複雑な複雑な気持ちになっていた。




