第18章 挑戦
入り口や出口とわかるような明確な場所はなく、何処からでも簡単に内部へ入れる構造に見えた。
「不思議な建物だなここ?」
神風がポケットに手を突っ込みながら見つめていると、大木の裏から二人の男が現れ、「何かサンフォレスト十番街に御用の方ですか?」敵意の感情すら見えない優しい笑顔の紳士が話しかけて来た。
「え、えっと、東郷ネネさんに合う約束をしているんですが、ここの住所から先がわからなくて」
神風はできるだけ精一杯の笑顔を作り、知り得た情報をその場で話した。
「わかりました、ではどうぞ中へお入りください。
右手から池のほとりを歩いて先のパティオで少々お待ちください」
「あ、あの、パチオって何でしょうか」
と隣で話を聞いていたピーターが照れくさそうにその紳士に向かって話しかけた。「小さな中庭でございます、どうぞお入り下さい」
そう話すと、大木から正面に見えていた風景と神風の間にあった透明なガラスの扉が一瞬だけきらっと光り左右に開くのが見えた。
「え、扉あったの?まっすぐ歩いていたらぶつかっている所だったよ」
ピーターがびっくりした顔で神風に話しかけた。
それは開くまで全く見えないウインドウだった。
「驚かれましたか?これは反射率を99%カットしてる超硬質なガラスウォールです、この中へは例え戦車が突入しても中へは入れませんよ」
今度は左側に立っていたスーツの男がニコニコしながら説明をしてくれた。
「そうなんですか、でもみんなぶつかってしまうのではないんですかね?」
神風は思った事を話してみると、再び笑顔で「いえ、お住まいの方々はすべて人体認証されていますから、足を止める事なく開きます」と答えてくれた。
「さーどうぞ、連絡を取りますので少々お待ちください」
二人はあっけにとられながら、右側の通路を歩き「ここに住みてーな、俺」っとお互い顔を見合わせ、辺りを見回しつぶやいた。
数十メートルも歩くと、野球のピッチャーマウンドのような少し地面が競り上がった場所に丸いテーブルと数脚の椅子が置いてあった。
「あれじゃねーか」神風がゆびを指して言った。
「何か浮いてないか「今度はピーターがゆびを指して言った。
円形の丘の上にはフワフワと四角い傘をひっくり返したようなものが、そよ風が吹くたびに少しだけ揺れてゆらゆらと動いていた。
その度に耳心地の良いリリリーンという、小さな鈴の音のような音がかすかに風に乗って流れていた。
「神さんこれ浮いてるよ、どうなってんだ」
二人はその円形の中に入り上を見上げていると、四角錐をひっくり返したような傘の中心部が静かに開き、すーっと何かが降りて来た。
「何これ、なんか降りて来たぜ」
二人はただただ見つめているしかなかった。
「サンフォレストへようこそ、どうぞお召し上がりください」
透き通るような声が上空から聴こえたかと思ったら、冷たく冷やされた飲み物と敷き詰められた芝生と同色のお手拭きが添えられていた。
「何これ、飲んでいいってこと?」
「え、でもお金ないよ、俺たち」
神風はいつもの癖でお金を持っていない事を告げると、「お代はいただいておりません、お客様が待たれている間、どうぞのどを潤してください」
と、また透き通るような声が天から聴こえてきた。二人は顔を見合わせ、すべての出来事にあっけにとられながらも、冷たく冷えた水を一気に飲み干した。
「うっめーなー、最高だぜここは」飲み干した後、思わず大声で神風が叫んだ。




