親バカは一日にしてならず
ノアが片手にトレイを持ち、料理を運ぶ。
ユイはキョロキョロと落ち着きなく、目移りを繰り返す。
「……ユイ、何回でも取りに来れるから」
「なくなっちゃうかもしれないし……」
ノアは小さく息を吐いた。
周りの来客がヒソヒソと話し始める。
「あの傀儡のノアと普通に話をしてるぞ」
「何者だ……あの女は!」
ノアはユイの腰に手を置くと席に案内する。
ユイはノアを見上げると頬を膨らませた。
「……まだ全部見てないのに!」
「席に運ばせるよ」
「ホント!?全部?」
「うん。全部」
はしゃぐユイの横でノアは遠い目をした。
テーブルにはエクリプス幹部やヒロ達が合流していた。
「ユイ!お前、どこ行ってたんだよ!」
ヒロがユイの肩を掴み、言い聞かせる。
「ここはヤバい奴らの集まりなんだぞ!」
「……相変わらず嫌な言い方だな」
ノアはボソリと呟くとトレイに乗せていた皿をユイの席に並べた。
次々と並んでいく皿の数に、ヒロは眉を寄せる。
「ユイ!こんなに食べれるのか?」
「残ったらお兄ちゃんとレオンにあげる」
「……お前なぁ」
ヒロは呆れたように息を吐き、ユイの額を指で弾いた。
レオンはシャンパングラスを傾けながら、フッと笑った。
「……ニコも昔、そう言っていたな」
口に出した後、静かに視線を下げた。
ノアは不思議そうに首を傾げる。
「レオン、なにかあった?」
「おっ!レオンもついに妹離れかぁ?」
マキシムがヘラヘラと揶揄うように笑う。
「……俺の唯一の家族だからな」
その一言で雰囲気に湿り気が混ざる。
マキシムはレオンと肩を組むと、ガハハと大胆に笑う。
「俺達なんて十年以上の付き合いなんだぜ?」
そのままバシバシと叩く。
レオンの持っていたグラスが揺れ、シャンパンが波立つ。
「もう実質、家族だろ!なっ!」
「それもそうだな」
レオンは持っていたシャンパンを飲み干した。
ノアはウェイターからグラスを受け取ると不思議そうに二人を見つめる。
「……そんなに家族って大事?」
「はあ?」
マキシムが眉を寄せ、声を荒げる。
「オメェは、両親に義理の父親までいるだろうがっ!」
「あ、うん。そうだったね」
「まぁ、全くもって羨ましくはないけどな!」
マキシムはパーティ会場の看板を見上げながら吹き出す。
騒がしいテーブルに二人の男が近づく。
「やあ。楽しんでいるかな」
「エリアス、こんなところで油を売るとは」
アルヴァルトとサイラスがグラスを片手にテーブルの前にやってくる。
マキシムはサッとレオンの筋肉の後ろに隠れた。
ヒロが立ち上がり、軽く頭を下げる。
「本日はお招き頂き──」
「どうだい?ノアの反抗期っぷりは」
「……はあ!?」
ヒロの横に立っていたノアは目の光を失い、遠くを見つめていた。
現実逃避を始めていた。
「いや、いつも通りだけど」
「さすがの君も私たちの息子の反抗期に気付けないとは……」
アルヴァルトはサイラスと顔を見合わせる。
「やはり、私たちはこの子の親に相応しい様だ」
「当然だな。あのガキを躾けられるのは俺たちだけだ」
サイラスは腕を組み、得意そうに笑う。
ヒロは眉を寄せた。
「ノアのドヤ顔はお前に似たのかよ……」
小さく呟く。
サイラスは不機嫌そうに眉を寄せる。
「俺とこのガキが似てる?笑わせるな!」
「なんなんだよ……」
ヒロは今日も振り回されていた。




