お楽しみは完食の後で……
アルヴァルトはテーブルに並ぶ皿を見ると、嬉しそうに微笑んだ。
「やはり、見栄えが違うね」
「アル、当然だろう。俺がシェフを選んだのだからな」
サイラスは腕を組んだまま、ドヤ顔で話す。
ユイがもぐもぐと頬を動かす。
「コレ、とってもおいしいです」
サイラスはテーブルに手をつく。
「それはマトロート。うなぎを赤ワインで煮たものだな」
ユイは目を丸くした。
スプーンで具材を掬い上げる。
「これってうなぎだったんだ!」
「蒲焼きとは違うだろう」
ユイは大きく何度も頷いた。
サイラスは目を細めながら、ユイに料理のうんちくを始める。
ヒロはジト目でグラスを傾けた。
「ったく、オヤジを転がすなっての」
ユイは生粋のオヤジキラーだった。
いつものように軽いツッコミを入れたヒロに、アルヴァルトが声をかける。
「もう、全てのアトラクションが解放されるからね」
「……ステージで挨拶とかしないのか?」
アルヴァルトは首を左右に振る。
「あとでパレードをするからね」
「……パレード!?」
「君の反応が今から楽しみだよ……」
意味深な言葉を残しアルヴァルトは次のゲストの元へ向かった。
「ヒロ、もう外で遊べるみたいだけど」
ノアが会場の入口を指さす。
顔にキズやタトゥーが刻まれた怪しい男達が颯爽と歩いていく。
頭には事前に購入したであろうキャラクターの耳が揺れる。
ヒロはそっと視線を逸らした。
テーブルの上に並ぶ皿に目が止まる。
先ほどからあまり減っていない。
「ほら、ユイ!早く食っちまえよ」
ユイは椅子にもたれ、天井を見上げていた。
「……お兄ちゃん、後は任せた!」
「くっ、いつもこうなんだよ!」
ヒロはユイの前の皿を掴むと、自分の前に寄せた。
レオンも席に座り、皿を取った。
「俺も手伝おう」
ステラとハルトがテーブルの前を通りかかる。
「……何これ!取り過ぎじゃない?」
「ねえ、全部食えんの?」
ハルトがヘラヘラと揶揄うように笑う。
ヒロはジト目で何も言わずにユイを指差した。
「……ステラさん達、もう遊びに行くの?」
ユイは眉を下げる。
照明が瞳に反射し、潤んで見えた。
「……仕方ない、ハルト!私らも食べるよ」
「えぇ〜……」
ハルトは渋々、皿を引いた。
ノアはグラスを傾け、呟く。
「あのさ、別に無理に食べなくても……残せばいいじゃん」
「ノア!お前はもっと食べ物の有り難みを知れ!」
まんまとヒロの逆鱗に触れていた。
ヒロによる短時間の説教が終わると、マキシムはレオンの後ろから顔を出す。
さりげなくノアの横に立った。
「……なあ、本当にアレやるのか?」
「うん。練習の成果を見せなきゃね」
「何頭かテーピング巻いてるぞ」
「涙ぐましい努力だね。引き続き撮影して映像化しよう」
マキシムは頭をガシガシと掻き毟る。
「……オメェ、どこまで本気なんだよ!」
ノアはクスッと笑った。
「僕はいつだって本気だよ」
マキシムは何も言えずに黙り込んだ。




