レッドカーペットでは胸を張っとけ
ハッピーランド内の会場でズラリと並ぶカメラ。
敷かれたレッドカーペットをヒロは呆れながら歩く。
「……ここまでやるか?フツー」
サクラは困ったように眉を下げた。
「チケットの裏にも撮影が入ると書いてありましたが……」
「面倒になる前にさっさと行こうぜ」
サクラはヒロの腕を掴んだ。
その口元は上がり、頬は赤らんだ。
二人の後ろをレオンとユイが歩く。
「ユイ、俺の手を取れ」
「て?」
ユイは不思議そうに首を傾げた。
「これもマナーだからな」
「そうなんだぁ!」
ユイはレオンの太い腕に捕まり、体重をかけた。
ぶら下がったユイをレオンは軽々と持ち上げた。
「レオンッ!すごーい!」
「丁度いい負荷だな」
ヒロはジト目で後ろの二人を見つめた。
小さく息を吐く。
「置いてくぞ……」
「レオン、お兄ちゃんが行っちゃう〜!早く早くっ!」
「承知した」
レオンは片腕にユイをぶら下げたままレッドカーペットを歩いた。
レッドカーペットの先に一人のスーツの男が立つ。
「よぉ!お前ら待ってたぜぃ!」
頭をガシガシと掻きむしり、居心地の悪そうにスーツを整える。
レオンはそっとユイをレッドカーペットに下ろした。
「マキシム、元気だったか」
「おぅよ!俺はいつも通りの日々だったぜ」
マキシムはレオンを見上げる。
「レオン、お前なんか痩せたか?」
「……こっちは激務だからな」
「そろそろ転職かぁ?待ってるからな」
レオンの口元がフッと緩む。
「……その時は頼む」
「レオン、そんなに忙しかったのか?」
ヒロが心配そうに眉を下げた。
「問題ない。いつものことだ」
「そうか」
マキシムがウェイターを呼び、それぞれがウェルカムドリンクを受け取る。
「よっしゃ!じゃあ、行こうぜ!」
輝く会場の中にヒロ達は入っていった。
会場内はとても一般人とは思えない者達がキャラクターと共にダブルピースを決めていた。
後ろには長く行列が続く。
ヒロは見ないフリをしながら進む。
「……何となく癪だが、とりあえず挨拶するか」
ヒロはあからさまに嫌な顔をした。
レオンは何も言わずに深く頷く。
「ヒロ、たぶんあそこだ」
レオンが指さす方向には人だかりができていた。
ヒロは大きく息を吐く。
人混みの隙間から金色の髪が見える。
いつも通りの人形みたいな表情。
しかし、いつもより顔が死んでいた。
「反抗期祝いおめでとうございます」
来客がアルヴァルトとサイラスに挨拶をする。
アルヴァルトは嬉しそうに目を細めた。
「……ノアもやっと反抗期を迎えて安心しているよ」
「まだまだ生意気なガキだな」
サイラスも満更ではないように答えた。
ジロジロと来客からの視線がノアに突き刺さる。
ノアは遠い目で話を受け流していた。
ヒロはくるりと踵を返す。
「忙しそうだし、後にするか」
「……そうだな」
ヒロ達はノアを見捨てることにした。
立食形式の会場では見た目も鮮やかな料理が並ぶ。
サクラは興味津々にウェイターの説明を聞く。
「サクラ、楽しそうだな」
「すみません。見たことのない食材でしたので」
サクラは恥ずかしそうに微笑んだ。
ユイがサクラの手を引く。
「サクラちゃん!あれなんだろ?」
「あれは牛の頭ですね」
「えっ!?」
「柔らかく煮込まれているので骨以外は全て食べられますよ」
ユイは恐る恐るウェイターに注文した。
薄い生地に乗せられた皿を受け取る。
「うわぁ、おいしそ……ん?」
死んだ目をしたノアと目があった。
「義父さん、知り合いが……」
ノアは嬉しそうにアルヴァルトに小さく耳打ちをするとユイの元へ向かう。
「ユイ、一人じゃ危な──」
「ノア君、反抗期おめでと〜!」
ノアはあからさまに眉を寄せると、ユイの皿を取り上げた。
「あっ」
ユイはシュンっと悲しそうな顔をした。
ノアは満足そうにニヤつくと、テーブルを指差した。
「席こっちだよ」
ユイは満足そうに微笑むとノアのスーツを掴んだ。
「待って!これも食べたい!」
「……はいはい」
ノアは慣れたように皿を運んだ。




