初めての共同作業はドキドキです
「次のレースは荒れる!」
そう言い放ち、ノアは立ち上がった。
そしてフラフラと歩き出した。
完全に酩酊状態だった。
「お、おいノア。大丈夫か?」
ヒロが思わず声をかけた。
「……なんか回るけど平気」
ノアは軽く手を振ると券売機へと消えた。
ヒロは眉を寄せた。
「そんなに飲んでたか?」
レオンは首を傾げる。
「アイツ……もしかして徹夜飲みか?」
「可能性はあるな」
「……なにぃ!?」
マキシムはノアを追い、走り出した。
「二人爆死はセレスにヤラレる!」
すでに息が上がり、汗が滲んでいた。
投票用のテーブルでノアは鉛筆を構えていた。
マキシムは投票用紙を取り上げる。
「ちょっ、ちょっと待てぇ!」
肩を上下に動かし、呼吸を整える。
ノアは赤ら顔で睨みつける。
「……なに?」
「報連相だっ!」
「ほうれんそう?」
ノアは意味がわからず首を傾げる。
「だからっ!何を買うか相談しろ!」
マキシムはノアの両肩を掴み、ノアを揺さぶる。
ノアはフラフラと揺れる。
「マキシムだって好き勝手に散財したよね?」
「ぐっ……」
「僕がこれをどう使おうが勝手だよ」
ノアは札束でペチペチとマキシムの頬を叩く。
マキシムはぐっと唇を噛み締めた。
「……セレスに実験台にされてもいいのか」
マキシムの呟きにノアの肩がピクリと揺れる。
「二人でヘソクリに手を出したってバレたら……俺たち半殺しじゃ済まないぞ」
ノアは小さく息を吐いた。
「僕を強請る気?」
青い目が細くなり、マキシムに冷たく突き刺さる。
「……俺たちの最初の仕事だろ。お前の買い目を言え」
真剣な表情のマキシムはノアを見つめる。
ノアは何も言わずにスマホのメモ画面を見せた。
マキシムは目を丸くした。
「……さ、三連単一点勝負ぅ!?」
「てめぇ!金をドブに捨てる気か!」
「なんでよりにもよって……この馬なんだよぉ」
マキシムはノアに掴み掛かり、声を荒げる。
最後は泣き言だった。
「荒れた方が儲かるだろ」
ノアは揺さぶられながらヘラヘラと笑う。
「せめて馬を変えろ!」
「そう?」
「俺の勘が言ってんだよ!これは外れる」
マキシムは取り上げた投票用紙をノアの目の前に置く。
「八ー三ー六!これで行くぞ!」
「マキシム、この馬人気だしオッズ低いよ」
「とりあえず元手に戻す!」
「……」
マキシムは指でトントンと叩き、ノアを促す。
ノアは鉛筆で言われるままにマークをする。
その時、マキシムに通行人がぶつかった。
「……いって!」
ふらついたマキシムの腕がノアの手元に当たり、マークがズレた。
「……あっ」
「くっそ!書き直せ」
ノアは渋々、新しい投票用紙をテーブルに置く。
鉛筆を握り言われるままにマークを塗り潰そうとする。
マキシムが大きくクシャミをした。
ノアの鉛筆がブレる。
「わりぃ!……ぶへぇぇくしゅっっ!」
マキシムの唾がノアの顔にかかる。
「……」
ノアは何も言わずに睨みつける。
マキシムはノアの顔を自分の袖で拭き取った。
ノアの持つ鉛筆がぐにゃりと動く。
「……また書き直しだな」
マキシムは苦笑いをしながら頭をガシガシと搔いた。
ノアはチラリとスマホを見る。
「マキシム、あと一分だよ」
「なにぃ!?」
「二回に分けなきゃいけないし、これで買うよ」
マキシムは慌てて投票用紙を覗き込もうとするが、ノアはサッと券売機に向かう。
「ま、待て!そんな適当に俺らの命を……」
マキシムの必死の訴えは届かなかった。
ノアは満足そうに二枚の馬券をマキシムに見せた。
「マキシム、残り時間で酒買っとこ」
ノアはフラフラと歩き出す。
その後ろを項垂れた男もフラフラとついて行くのだった。




