バイト先は伝説のコンビニ
ガラスのテーブルの椅子に座る男が二人。
ザビィとその隣に座るヒロは履歴書を指さしながら書き直しをしていた。
「もっと丁寧にな」
「……めんどくせぇな」
「文字で人物像が分かるらしいからな」
「こんな紙切れで分かった気になられてもな」
ザビィは小さく舌打ちをした。
「……それも正論だよ!」
ヒロは軽く肘打ちをし、ザビィをテーブルに向かわせる。
「ヒロ様、お茶を淹れました」
サクラがティーカップを置く。
ふわりと柔らかい香りが広がる。
「ザビィ様もどうぞ」
「……様!?」
ザビィは眉を寄せながらティーカップを傾ける。
「……美味いな」
「だろ?」
ヒロは少しだけ得意げに口角を上げる。
「お口に合って幸いです」
サクラはほんのりと頬を染めた。
銀色のトレイをぎゅっと握りしめた。
ヒロは履歴書の志望動機を指で叩く。
「なあ。ザビィは、どこで働くんだ?」
「……コンビニらしい」
「コンビニか……んん?」
ヒロは眉を寄せた。
ジャケットに袖を通していたレオンが口を開く。
「……まさかHummerが言ってたアルバイトって」
レオンとヒロは顔を見合わせた。
「ザビィのことだったのかよ!」
ザビィは訳も分からず、首を傾げると適当にペンを走らせる。
レオンは慌てたようにザビィの腕を掴む。
「ザビィ、お前あのHummerと働けるかもしれないぞ!」
「はぁ?ただのコンビニのバイトだぞ?なんでHummerが──」
「ちゃんと話すから適当に書くのやめろ!」
「って訳でおそらく、そのコンビニってのがHummerの店だ!」
レオンとヒロはやや興奮気味に説明を終えた。
ザビィは疑うように二人を睨みつける。
「いやいや、なんでHummerがコンビニやってんだよ」
「趣味って言ってたぞ!」
「趣味でコンビニって意味わかんねえだろ」
ヒロとレオンは顔を見合わせる。
言われてみればそうだった。
「詳しく聞けば良かったな……」
「ザビィ!裏の伝説と働けるチャンスなんだぞ」
レオンが色紙を指差しながらアピールを続ける。
ザビィは小さく息を吐いた。
「お前らな……ノアだぞ?何か裏があるに決まってる」
二人の勢いは一気にトーンダウンする。
「……たしかにな」
皮肉なことにザビィが一番ノアを理解していた。
「それでノアは?」
「出稼ぎ中だ!」
「あと二、三回は踊るって言ってたな」
レオンがティーカップを傾ける。
「踊る?出稼ぎじゃないのか?」
「いや、そうなんだけど……アイツ、ポールダンスで荒稼ぎしてたんだよ」
「ポールダンス!?アイツまじで何なんだよ」
ザビィは腕を組み、背もたれに沈んだ。
ヒロはレオンを見上げる。
「そういえば、なんでポールダンス踊れるんだ?」
レオンは目を細めて遠くを見つめる。
「色々あったからな……聞きたいか?」
ヒロは小さく呟いた。
「……いや、いい」
またしても即答だった。
紅茶を啜る音だけが響いていた。
その後、証明写真の貼り付けも終わり無事に履歴書は出来上がった。
レオンが小さく呟く。
「……ヒロ、俺の時より気合いが入ってないか?」
「悪いなレオン。お前より希望がありそうだからな」
「どういうことだ!?」
ヒロは何も言わずくるりと背中を向けた。
大きな自動扉が開く。
ノアが見慣れたスウェット姿で部屋にやってきた。
「あー疲れた。サクラ、僕にもお茶」
「勝手に命令すんな。サクラ、別に出さなくていいからな」
サクラはクスッと笑うと茶葉の入った缶を手に取る。
ノアはサクラの隣に立つとその缶をサッと取り、蓋を開けた。
「ノア様、ありがとうございます」
サクラは微笑むとティーカップを並べ始めた。
椅子に座り、テーブルに顔を伏せる。
ヒロは心配そうにノアを覗き込んだ。
「大丈夫か?」
ノアは軽く手を振って無事を伝える。
「情報の対価がブラックカラーのパンフの撮影でさ……」
「パンフ……まさかあの服でか?」
「まさか」
「っだよな!ほぼ裸だったしな」
ノアはやや遠い目をした。
「もっと布が減ったよ」
「!?」
「パンフ完成したら貰っとこうか?」
「……悪いがいらねぇ」




