コンビニオーナーは毎日が激務
「ハマーって誰だよ!」
ヒロのツッコミが響き渡る薄紫色の部屋。
ノアは立ち上がり、壁に埋め込まれたスイッチを操作した。
カチッ。
軽い音と共に薄紫色が消え、部屋の照明がついた。
「ヒロ、このお方は武器ブランドのHummerの職人……伝説級の人物だ!」
レオンの声は緊張しているようにやや上擦る。
「……たまたま飲みに来てたみたい」
ノアは何ともないようにサラリと言う。
「たまたま!?裏に現れるのも激レアだぞ!」
「そうなのか?」
ヒロはノアへ視線を移す。
「本当にたまたま、だよ」
ノアはクスッと笑う。
年配の男性が口を開いた。
「ノアちゃん、よく店に来るんだよねぇ」
「……店?」
「うちの店にさぁ、タバコ買いにくるの」
ヒロは眉を寄せた。
目を細めて、ノアを睨みつけた。
「ノア……お前、武器屋でタバコ買ってたのかよ!」
「いや濱さん、駅前のコンビニで働いてるから」
「「コンビニィ!?」」
ヒロとレオンの声が重なる。
濱は微笑みながら何度も頷く。
「趣味でコンビニ始めたらさ、忙しくなっちゃってねぇ」
「激レアの理由がそれかよ!」
ヒロは思わず声を上げた。
レオンはどこからか色紙とペンを取り出す。
「サインもらえますか」
差し出した手は小さく震える。
「そんなに凄い人なのか」
「当たり前だ!家に戻ったら地下の武器庫を見せてやるからな」
「……いや、そこまでしなくていいから」
濱はペンを受け取りつつ、レオンの大きな手を掴んだ。
モミモミと何かを探るように皺の入った手が動く。
「うん。君、レオン君だっけ?……強いねぇ」
「ハマーが俺の名を……」
レオンは天井を見上げた。
そうしないと感動の涙が零れそうだった。
ノアはレオンを軽くスルーすると濱に声をかけた。
「それじゃ濱さん、一人使ってよ」
「……見込みがある子ならねぇ」
「あるよ。ただ、射撃はまるでダメなんだけど」
濱は目を丸くする。
数秒後、ゆっくりと頬を上げた。
「面白いねえ、じゃあアルバイトからお願いしようかな」
「よっし!決まりだね」
ノアはテーブルを叩き、勢いよく立ち上がる。
「おい、ノア!どう言うことだ?」
ヒロが困惑したように立ち尽くす。
「……僕の新しいビジネスだよ」
「武器でも開発するのか?……物騒だな」
「まさか?そんなのヒロが怒るだろ」
ヒロはキョトンとノアを見つめるとポリポリと頭を搔いた。
「……出稼ぎはもういいのか?」
ノアはくるりと背中を向け、歩き出した。
「……あと二、三回は踊らなきゃな」
「まだやんの!?」
ヒロの不安気な声が響く。
脳裏に浮かぶ、公然わいせつ罪の文字はそう簡単に消えてはくれなかった。
「なあ、服だけでも替えないか?スウェットでもお前なら出来るだろ?」
ノアは眉を寄せて振り返る。
「ヒロ、ポールダンスはね……このくらい露出するのが普通なんだよ」
「……そうなのか?」
ヒロは目を見開いた。
大切そうに色紙を胸に抱いたレオンがヒロの横を通過する。
「絶対、嘘だろ」
「ホントだよ〜」
ライトがレオンの後ろから顔を出す。
ヒロとレオンの肩が大きく跳ねた。
「いつの間に!」
「情報屋は気配ぐらい消さなきゃね」
ライトは穏やかに微笑む。
そのままノアの隣に立つと肩に手を置いた。
「ノア、今回の情報料は……」
「分かってる」
ライトはノアの髪の毛に指を通す。
ノアは小さく息を吐いた。
「ヒロ、僕はここでやることがあるから先に帰ってて」
そういうと背中を向けノアとライトはステージに戻って行った。
ヒロはレオンに向かって呟く。
「なあ、ライトってアルヴァルトに似てるよな」
「……黙秘する」




