無職の奴隷が出稼ぎに消えたんだが
太陽が昇り燦々ととある施設に降り注ぐ。
ベッドが並ぶ部屋のカーテンが容赦なく開かれる。
部屋には寝息と呻き声が錯綜していた。
「起きてください」
セレスが体をゆすり叩き起こしていく。
ヒロは眉を寄せながら目を開いた。
スマホで時間を確認する。
「……んだよ。セレス、まだ六時だぞ?」
「……起きて、いただけますか」
セレスの歯切れの悪い返事にヒロは胸騒ぎがした。
ブツブツと文句を言いながら部屋を出る一同。
大きなガラスのテーブルの椅子にはある二人の男が座って待っていた。
ヒロは思わず眉間に寄った皺を手で押さえた。
そこにいたのは、優雅にコーヒーの香りを楽しむアルヴァルトと足を組み本を読むサイラスだった。
「げっ……やっぱりお前らかよ」
ヒロは二人から一番遠い反対側の席についた。
アルヴァルトとサイラスは顔を見合わせると立ち上がり、ヒロを挟むように隣に腰を下ろした。
「やれやれ」
「アル、こいつも反抗期じゃないのか?」
「違ぇよ!なんでこっちに来るんだよ!」
三人から少し離れて幹部達とその他も椅子に座る。
ヒロはキョロキョロとある人物を探す。
「ノアは?」
「ノアなら朝早くから出て行きましたが?」
セレスが眼鏡をクイッと上げた。
サイラスがニヤリと笑う。
「アイツの資金は凍結させたからな。出稼ぎでもしてるんだろ」
「は?」
アルヴァルトはコーヒーを一口飲み、マグをテーブルに置く。
「今回の騒動で拠点も壊滅状態になってしまったからね。ノアのお小遣いから天引きさせてもらったよ」
「小遣いでどうにかなんのか!?」
「まあ、建て替えくらいなら」
「なんのかよ!」
朝からヒロのツッコミが冴え渡っていた。
ユーミルが隙を見て口を開く。
「施設長、本日はどういった用件でいらしたんですか?」
アルヴァルトは嬉しそうに頬を緩ませる。
「これを渡したくてね」
そう言うと机の上にチケットの束を置いた。
ヒロは束から一枚抜き取った。
『サイラスの復帰を祝う会ならびにノアの反抗期を見守る会〜共に子の反抗に耐え凌ごう〜』
「場所はハッピーランド!?」
「子供は好きだろう?」
チケットは次々と人の手に渡っていく。
ヒロは心の中でノアに同情していた。
「なんで今更、反抗期なんだよ」
アルヴァルトとサイラスは顔を見合わせ、フッと笑った。
「俺たちは親だからな。子のことなら何でも分かるんだ」
「このチケットを見せた時もノアは反抗的な目をしていたね」
アルヴァルトは感慨深そうに頷く。
「……それ、ガチで嫌がってるだけだろ」
ヒロが親ぶる二人と話している間に他のメンバー達は和気藹々と貸切イベントの話で盛り上がっていた。
「さて、用件はこれで済んだからね」
アルヴァルトとサイラスは席を立つ。
ヒロは数秒考えた後、二人の背中に声をかけた。
「待てよ。ノアはどこで出稼ぎしてんだよ」
アルヴァルトは顎に手を置き、くるりと振り返る。
「ああ、ライトのところじゃないかな?」
「確か情報屋だったか?」
「裏ではそうだが……」
ヒロの背筋に嫌な汗が流れる。
瞬時に聞かなければ良かったと後悔していた。
「BLACK COLLARという店だよ。なかなか趣味がいいんだ」
なぜか上機嫌のアルヴァルトはレオンを手招く。
レオンは何も言わずに立ち上がった。
「レオン、案内してあげなさい」
「いや、俺は別に行きたいわけじゃ」
「……承知した」
またもやヒロの意思とは関係なく話は進んでいた。
「こいつら全然人の話聞かねえんだけど!」
ヒロの呟きは全員からスルーされた。




