……さあ、帰ろうか
かつて、赤い絨毯が続いていた場所。
そこには不自然な瓦礫の山が出来ていた。
大男は逆さまの状態で瓦礫の山に突き刺さっていた。
ノアは両手を叩き、手についた砂埃を払った。
ミラは満足そうに口角を上げると、黒い服の男達を追いかけてどこかへ消えていった。
廊下の奥から男の悲鳴が響く。
「……ミラだ!急げ!」
「ルシアン兄さん、もう撤収しよう」
「そうだな。全員撤収!残りはミラに」
ルシアンが二人の男を引き摺りながらノアの前を通りかかる。
瓦礫の山の上に逆さまの状態で固定されたレオン。
思わず、足を止めた。
「ノア、なんだその服装は!」
「それに……レオンにこの仕打ち……」
ノアは何も言わずにルシアンを見上げた。
ルシアンの部下が慌てたようにルシアンの耳元で何かを伝える。
ルシアンは眉を寄せ、小さく頷いた。
「……そうか。理解した」
「ノア、八つ当たりもほどほどにな」
ルシアンは息を吐くと部下にレオンの発掘を依頼し、そのまま二人の男を引き摺っていった。
ノアは廊下の先に向かい歩く。
ある部屋の扉に手をかけた。
ゆっくりと開く。
「みんな終わったよ」
そこにはニコを押さえつけるイヴとマキシムがいた。
ニコはドクロが描かれたボタンに手を伸ばす。
「……何してんの?」
「お前もニコを止めろ!」
ノアは小さく息を吐くと本棚の一冊を手に取り、その奥に控えるボタンを押した。
カチッ。
静かになる部屋。
その隙を見て、ニコはドクロマークのボタンを押す。
カチッ。
ニコは首を傾げる。
カチッ、カチッ。
「壊れちゃった……」
ニコは悲しそうに俯いた。
イヴとマキシムはほっと息を吐いた。
「やっとテーマソングから解放された」
「お疲れ様」
ノアは目を細め微笑む。
ユーミルはノアの服装を横目に、窓へ向かい外を覗く。
サンクチュアリの撤収を確認するとくるりと振り向いた。
「無事、終わったのかな?」
「まあね」
「サイラスは?」
「……」
ノアは黙り込むと小さい声で呟いた。
「もうその話は──」
その瞬間、扉が勢いよく開く。
現れたのはステラとハルトだった。
「終わったぁ!ねぇ飲み行こ!」
「久しぶりに集まってるしな」
ユーミルは髪の毛に指を絡める。
「だけど、ペクや他の旧中枢は……」
「義父さん達がまとめて生け捕りにしてるよ」
ハルトはノアと肩を組むとフッと吹き出す。
「ユーミル、聞いたか?」
「おい、あの話は……」
嫌がるノアを制してハルトは頬を上げる。
「アルヴァルトとサイラスがさあ──」
「や、やめっ」
ノアはハルトの口を慌てて塞ぐ。
再び勢いよく開く扉。
全身が土埃に塗れたレオンが顔を出した。
「ノア!反抗期とは本当か!!」
ノアは手で眉間を押さえた。
「……反抗期!?」
「なにぃ?この歳でか?」
「なるほど、ね」
「……」
肩を落としたノアは扉に手をかけ、ゆっくりと部屋から出て行く。
「……さあ帰ろうか」
部屋の中では、貸切パーティーについて盛り上がる。
その熱はしばらく続くのだった。




