お散歩で平和的に解決します
逃げ惑うレオンの後ろから銃を発砲するミラが追いかける。
「こっちに来るな!」
「的、動くと当てにくい」
「的!?」
カチャ。
カチャッカチャ。
ミラが何度も引き金を引く。
ゆっくりと首を傾げる。
レオンは胸を撫で下ろした。
「やっと弾切れか……」
フッと息を漏らし、扉の隙間から顔を出した。
パァン。
頭のすぐ横を通過する銃弾。
レオンは咄嗟に身を翻した。
「アイツ、頭を使ってきやがった!」
「おしい」
抑揚のない声。
「……もう、あれをやるしかないか」
レオンはゴクリと喉を鳴らした。
ミラはレオンの隠れた部屋の前に立ち、銃口を差し込む。
ゆっくりと狙いを定める。
その瞬間、レオンはミラに飛びかかった。
レオンは両脇にミラの腕を挟み、二階から飛び降りた。
ブレーメンサンセットだった。
「よしっやれる!」
レオンは勝利を確信した。
しかし、一つだけ誤算があった。
ミラはレオンの想定以上に小柄だった。
レオンの頭が床に叩きつけられた。
「うぁ、ぐがぁ……」
レオンは動かなくなった。
そのままぐったりとミラの上に巨大な筋肉がのしかかる。
ミラの両腕は巨体に挟まれたまま。
「うご、けない……殺す!」
ミラは筋肉に敷かれたまま、物騒な言葉を呟き続けるのだった。
その横を散歩中のノアが通りかかる。
「危ないなあ」
眉を寄せると一言だけ漏らした。
ミラはノアに向かって何とか声を上げた。
「……ノア、これ避けて」
ノアはそっと覗き込む。
「義姉さん、すみません。僕、散歩があるので」
「散歩?」
くるりと先を歩くノアの後ろを四つん這いの幹部がゾロゾロと通過する。
ミラは何も言わずに見送った。
「……おもしろそう」
小さい声。
レオンは無意識に眉を寄せていた。
ガラスの回転扉があった拠点入り口では、いまだに戦いが続いていた。
立食パーティの献立で揉めていた。
「アル、そんな無難なメニューで歓迎して良いと思っているのか」
「サイラス、時代は変わったんだ……過度なもてなしはハラスメントだよ」
社会問題だった。
言い合う大人をステラとハルトは冷めた目で見つめていた。
「いい歳のおっさんの言い合いは見苦しいな」
「しかも自分の歓迎会っぽいし」
二人の口から息が漏れた。
その時、背後からざわめきが広がる。
カシャン。
武器を落とす音が近づく。
「義父さん、もう終わりですよ」
散歩中のノアが螺旋階段に到着する。
サイラスは思わず二度見した。
目を細め、口角を上げる中高年の群れが通過する。
四つん這いで移動する彼らは、少しだけ息をあげている。
「……素晴らしい」
アルヴァルトは感嘆の声を上げた。
「ここまで手懐けていたとは」
ノアは青い目を細めた。
「平和的解決ですよ」
「ふざけるな……」
サイラスが拳を握りしめ、怒りで体を震わせる。
ノアは首を傾げた。
「なんだ!その服装は!」
サイラスはノアのナース服を指差した。
ノアは足元に視線を落とすとスリットから露出した脚に手を当てがった。
「僕としたことが……ストッキングが電線して──」
「そこじゃない!」
ノアは怪訝そうに眉を寄せ、顔を上げる。
「男のくせに女の服を着るな!男らしくしろ!」
「そこですか」
ノアは深いため息をついた。
アルヴァルトが間に入り、サイラスの肩に手を乗せる。
「サイラス、知らないのかい?女装とは男にしか出来ないんだよ」
「!」
サイラスは大きく目を開く。
全身を雷に撃たれたような衝撃が走っていた。




