戦闘?いやスカウトです!
崩れかけた柱。
赤い絨毯が続いた廊下は瓦礫が飛び出し、部屋の扉もボロボロに破壊されていた。
校歌に似た謎の曲が流れ続ける。
『えくり〜ぷす、えくり〜ぷす、みんな〜のちからぁ〜♪』
様々な組織がエクリプス陥落を狙い、半壊した劇場に集まる。
まるでテーマソングが敵を寄せ集めているようだった。
「だいぶ集まってるね」
窓から少しだけ顔を出したユーミルは、天然パーマの髪の毛をくるりと指に巻く。
「多すぎだろ!外にまで人が出てきてんぞ!」
マキシムが声を荒げ、ガシガシと頭を掻く。
「いくらサンクチュアリでも、やべぇんじゃねぇか?」
「大丈夫だ。問題ない」
「本当かぁ?」
キッパリと言い切るレオンに、マキシムは眉を寄せた。
「来たよ」
ユーミルは外を指さす。
黒い車から黒いスーツに身を包む男達が降りてくる。
いつものように整えられた姿のアルヴァルトと、その隣に立つ眼鏡の男。
「……あれが、サイラスか」
ユーミルが小さく呟いた。
レオンが隣に立ち外を覗く。
「ああ。ノアの実父だな」
「え?」
「あれが?」
「まじぃ?」
それぞれが思わず声を上げた。
レオンは首を傾げ、ユーミルに視線を送る。
「まだ会ってなかったのか?」
「……僕らは初見だよ」
「そうか」
レオンはユーミルの肩をそっと叩いた。
「あれって、ミラじゃない?」
イヴが声を上げ、指をさす。
レオンの眉がピクリと動いた。
ゆっくりと視線を外に向ける。
ミラはすぐにレオンに気付き、何も言わずに中指を立てた。
「なんでだよ!」
レオンは思わず突っ込んだ。
ミラは転がっている男の胸ポケットを漁ると、銃を掴み取った。
「ヤバいやつが文明を手にしてしまった……」
「ヤバいやつ?」
「お前ら、絶対に部屋から出るな!」
レオンはくるりとニコに向く。
「ニコ!特にお前は……」
カチッ。
『〜♪』
ニコは楽しそうにボタンを押した。
「まあ、大丈夫そうだな」
レオンはほっと息を吐いた。
レオンは部屋の扉に手をかけた。
「では行ってくる」
「待って」
ステラがレオンの後ろについて行く。
「私も行く」
「いくらお前でもここから先は危ないぞ」
「平気。まだ暴れ足りないし」
ハルトが小さく息を吐き、ステラの横に立った。
「じゃっ、俺も行くかね」
レオンは数秒黙った。
そして、フッと頬を上げた。
「どうなっても知らないからな」
「こっちのセリフ!」
レオンの背中を押しながら、二人のステラは部屋を出て行った。
かつて、ガラスの回転扉があった入り口を、サンクチュアリの幹部が取り囲む。
すでに建物の外には男達の山が出来上がっていた。
アルヴァルトは建物内の喧騒に眉を寄せた。
「さあ、さっさと終わらせようか」
軽く手を叩くと、それが合図のように幹部達が走り出した。
一番先に飛び出したのはミラ。
「……オモチャ、いっぱい」
抑揚のない、小さい声。
慌てたようにルシアンとライトが後を追う。
「まずい、ミラに先を越された」
ルシアンは自身の後ろに続く黒服の男達に命じる。
「いいか!見込みがありそうなら確保だ。それ以外はミラに渡せ」
「ルシアン兄さん、それじゃあ指示が雑ですよ」
ライトがウェーブがかった髪を揺らす。
「見栄えが良いやつだけ。他はミラに」
「大して変わらんだろ!」
「こちらは身体が資本なので……」
「うちもそうだが」
指の骨を鳴らしながら二人の横を歩く男。
派手なシャツは胸元まで開き、傷跡や鍛えられた筋肉が覗く。
「兄貴、ライト。急がねえとミラに全員やられんぞ」
「承知している」
男は大きく口を開け、欠伸をした。
ライトは横目に見ると、小さく息を吐いた。
「カイ兄さんは気楽でいいね」
「あ゛ぁ?んだと」
「こんな所で喧嘩をするな。行くぞ」
アルヴァルトは顎に手を添え、子供達を見送る。
サイラスは眉を寄せながら呟いた。
「全く、お前の子供達は野蛮で品がないな」
「そうかい?」
「教育をやり直した方がいいんじゃないか?」
アルヴァルトはフッと目を細めた。
「私の子供達はみんな完成しているよ」
サイラスは何も言わずに、小さく息を吐いた。




