テーマソングは集合の合図
ある部屋の中。
ドクロマークが描かれたボタンの前で四人は揉みくちゃになっていた。
「ニコォ!ダメってばぁ!」
「ユーミル……お前の脳みそどこ行ったんだよ!」
イヴとマキシムは必死だった。
ドクロマークの描かれたボタンを守っていた。
「こんな所にあるということは危険ではないよ」
「お前!話聞いてたか!?レバーは爆弾だったんだぞ!」
「じゃあ何かあるにしても野外の可能性が多少なりとも高いね。さあ、押して確認してみようか」
「くっそ!コイツ、俺より力が強いじゃねえか!」
マキシムは汗だくだった。
掴んでいたユーミルの腕が汗で抜ける。
ユーミルはクスッと笑うとボタンに手を伸ばした。
カチッ。
「に、逃げろ!」
マキシムは思わず大声を上げた。
しかし、何も起きない。
ユーミルはつまらなそうに目線を下げた。
「コードに埃がかかっているし、接触不良かな……」
「えぇ〜!そんなぁ」
ニコもガックリと膝をついた。
その瞬間。
館内放送から聞き覚えのある曲が流れ始めた。
『〜♪』
「……なんだっけ?これ」
「これ……まさか!?」
『こうぎょ〜うだんちのまんなかで〜♪』
「エクリプスのテーマソングじゃねえか!」
マキシムが突っ込んだ。
学校の校歌のような曲調が続く。
外の廊下からバタバタと足音が近づいてきた。
扉が勢いよく開いた。
「ちょっ、ちょっとこれ!」
顔を赤くしたステラが部屋に飛び込んできた。
ステラの後ろではハルトがニヤける。
「止めてよ!今すぐに!」
焦るように声を荒げる。
『きよ〜く、ただし〜く、うつく〜しく♪』
「これステラの声じゃん」
ハルトが腹を抱えて笑う。
「確か全員で歌ったよな」
再び扉が開き、レオンとザビィが顔を出した。
「ふぅ。テーマソングのお陰で隙ができたな」
「隙というか笑われてたけど……」
ザビィは眉を寄せてレオンを見上げた。
ユーミルは全員の顔を見渡す。
「どうやら無事、生き残ったみたいだね」
『えくり〜ぷす、えくり〜ぷす、みんな〜のこころぉ〜♪』
止まらないテーマソングに一同は吹き出した。
ユーミルのスマホが鳴り出す。
何も言わずにポチポチと操作し、またポケットに戻した。
マキシムが眉を寄せて、指をさす。
「ユーミル!お前さっきから何してんだよ」
「何って連絡を取っているのさ」
「そ、そりゃ分かってんだよ!誰とだよ!」
ユーミルは口元を緩めた。
「新生サンクチュアリだよ」
「「新生!?」」
レオンは壁にもたれると、腕を組んだ。
「どういうことだ」
ユーミルは淡々と説明する。
「アルヴァルトとサイラスは契約を結び直したそうだよ。つまり、サイラスは旧中枢からサンクチュアリ側に寝返ったんだよ」
静まる部屋。
「えっ……じゃあこの戦いの意味って」
「僕たちは完全に巻き込まれた形になるね」
ユーミルの口からは乾いた笑いが漏れ出る。
またユーミルのスマホが鳴る。
スマホの画面を見て通話ボタンをタップした。
「はい、こちらユー……えっ?あの、」
「あ……はい。伝えます」
ユーミルは静かにスマホをしまった。
マキシムが口を開く。
「またサンクチュアリか?」
ユーミルは静かに頷いた。
「この先はサンクチュアリが収めるそうだよ。レオン、君も一応サンクチュアリのメンバーだろ?」
「ああ……しかし俺には何の連絡も」
レオンはスマホを取り出し確認する。
「アルヴァルトから伝言だよ。一斉に叩くから呼んだら参戦してだってさ」
「……雑だな」
「うん。とりあえず僕たちは、ここで待機しようか」
カチッ。
『〜♪』
一斉に振り返る一同。
ニコが嬉しそうにボタンを押す。
「ちょっ、ニコ!」
「もう一回聞きたくなっちゃったぁ」
ふんわりと微笑む。
ステラの手がプルプルと震え出す。
手には銀色のナイフ。
「ステラ!落ち着け!」
『こうぎょ〜うだんちのまんなかで〜♪』
「……消す!」
部屋の中で銀色のナイフが何本も飛び交うのだった。




