今日の奴隷はナース服な気分
「おい!ユーミル、お前なにを企んでんだよ!」
「今に分かるよ」
ユーミルはマキシムの背中でニコリと微笑む。
「いっつもお前の手のひらの上みたいでよぉ」
マキシムはグチグチと文句を言いながら扉を開いた。
扉の向こうに広がる景色に、二人は言葉を失い、固まった。
「ニコッ!だ、ダメだって……」
「うぅっイヴちゃん」
ニコがイヴを押し倒していた。
イヴの赤い髪が床に広がる。
二人の手は強く握られ、小さく震える。
「……これは読めなかったな」
ユーミルは小さく呟いた。
髪の毛をくるりと指に巻きつける。
「ばっか!じっくり観察してねえで閉めろ!」
焦るマキシムはユーミルの背中を押し、扉を閉めようとする。
「マキ、シム……ニコを、止めてぇ」
「あ゛ぁ?」
誤解はすぐにとけた。
「……で、ニコはこのボタンを押したいと」
マキシムは胡座をかき、頬杖をついた。
ニコはもじもじと両手の指先を絡ませた。
「だってね、このボタン押したらどんな音がなるのかなって……」
ニコの視線はドクロマークが描かれたボタンから離れない。
「そこのレバーは正面の爆弾だったし、このボタンだけはやばいと思って!」
イヴは乱れた髪を結び直しながら説明する。
「イヴ!お前よく死守したなぁ!」
マキシムはイヴの背中をバシバシと叩いた。
「いたっ!やめ、マキシム!」
ユーミルはボタンを見つめ、顎に手を添えた。
「確かにこのボタンは一体なにと連動しているのか気になるところではあるね……」
「だよねぇ」
ニコが微笑みながらそっと背中を押す。
マキシムとイヴの顔色が変わった。
「ダメ!絶対やめて!」
「おい、ユーミル!お前、今まで散々リスク回避してきただろ!」
新たな戦いが始まろうとしていた。
カツン、カツンと靴音が響く。
ノアは一人である場所に向かっていた。
旧中枢アジト。
独特な門構えの建物が高く聳える。
ノアは、まるで知っている場所かのように進む。
後ろには見張りの男達が眠るように倒れていた。
ある部屋の扉の前に立ち、押し広げていく。
部屋は薄暗く中央には大きなモニターが置かれ、囲むように円状のテーブルと大きな椅子が並ぶ。
椅子には旧中枢の幹部達が深く座り、扉の前に立つノアを見つめる。
「ノア……」
「生きていたのか」
幹部達の口から言葉が漏れる。
ノアはフッと口角を上げると、ゆっくりと中央に進む。
靴の鳴る音が響く。
ナース服に身を包んだノアは、ゆっくりと目を細めた。
透き通るような青い瞳にモニターの光が差し込む。
「久しぶり。みんな……」
ノアはテーブルの上に座り、脚を組んだ。
スカートに深く入ったスリットからは長い脚とガーターベルトが覗く。
「さあ、どうしてあげようか……?」
扉はゆっくりと閉まっていく。
パタン。
扉の音がやけに大きくアジトに響き渡った。
一方、その頃。
ヒロはセレスと二人でお茶を飲んでいた。
日頃の愚痴を零していた。
「だからノアのやつに言ってやったんだよ!」
「……それ、意味ありますか?」
「ねえよ!」
「そうでしょう。私も──」
ヒロは一息つくと、マグカップを持ちコーヒーを啜った。
「それにしてもよ。あいつ、何でナース服なんか着て行ったんだよ……」
「……おそらく、そういう気分だったのでは?」
「意味わかんねえ。いや、分かりたくねえ!」
セレスはフッと口元を緩めると椅子から立ち上がった。
「コーヒーのおかわりでも」
「おっ、貰うわ」
テーブルの端に置かれたタブレット端末は光り続けていた。
チカチカと。




