愛する人なら外堀から埋めまくれ
激しい言い合いが続くリビング。
レオンは息を大きく吸い割って入った。
「おい、そろそろ落ち着け、な」
口喧嘩を繰り広げる三人はギロリとレオンを睨みつけた。
「うっ……なんだよ」
ノアが仁王立ちでレオンに圧をかける。
「レオン!僕とサイラスは似てないよね」
「似てるかと言われると見た目も似てるな」
ノアはレオンに蹴りを入れた。
「なんでだよ!」
エリザが皿を拭きながら微笑む。
「ダーリンもノアに会えて良かったわね♡」
サイラスは眉を寄せ、頭を掻いた。
「前から言おうと思っていたんだが……そのダーリンってやめてくれないか?」
エリザはクネクネと筋肉質な身体を動かす。
「いやぁン♡照れてるの?」
「照れるというか普通に……」
明らかに二人の温度差がおかしい。
レオンが何気なくサイラスに声をかけた。
「ん?エリザと交際中なんだろ?」
「はあ?」
「そう聞いてたからな。ノアもエリザを母さんと呼んでいたぞ」
「……母さん!?」
静まる部屋。
「ちょ、ちょっと待て」
サイラスは頭を押さえながらエリザに近づく。
エリザは、ぽっと頬を赤らめた。
「おい、エリザ」
「なあに?ダァリン♡」
「俺達は別に交際してないだろ」
「なによぉン♡私達一緒に住んでるじゃないの〜」
サイラスはあからさまに眉を寄せる。
「……それに、好きだって言ったじゃない」
エリザは顔を両手で隠しながらクネクネと答えた。
サイラスは目を見開いた。
「い、言ってないだろ!何の話だ!」
「言ったわよ♡」
エリザはスマホを取り出すと録音音声をスタートさせた。
『俺はやっぱり……この味が好きだな』
「あっ間違えちゃったン♡……こっちよ」
『俺はやっぱり……好きだ、な』
またもや静まる部屋。
「お前!編集してるじゃねえか!」
「いやぁン♡」
「俺はお前の料理を褒めただけで……」
「あら?それはプロポーズよぉ♡」
「違うだろ!」
レオンは呆れたように目を細めた。
「ヒロ。もう俺達は、そろそろ帰らないか?」
「……そうだな」
ヒロはキョロキョロと見回す。
「あいつは?」
ノアはソファに横になっていた。
額には大きな粒になった汗が浮かび上がる。
「どうしたんだよ!さっきまで元気だったろ」
ノアは薄く目を開く。
「……鎮痛剤が切れた……みたい」
声も少し掠れていた。
レオンはそっとノアが寝転ぶソファーの前に腰をおろした。
「施設に戻ればセレスの痛み止めがあるだろう」
ノアはのろのろとレオンの背中に掴まった。
レオンは軽々とノアを背に乗せ、立ち上がる。
「じゃあ急いで施設に帰るか」
「ああ。そうだな」
玄関に向かう三人をアルヴァルトとサイラスは静かに見送った。
アルヴァルトが口を開いた。
「サイラス……私達はもう一度契約内容の確認をするべきではないかな?」
「……そうだな」
二人の表情は先ほどよりも柔らかい。
エリザは二人を横目に見ると嬉しそうに紅茶の缶を取り出した。
「フンッ!」
エリザの掛け声と共に筋肉質な腕に筋が浮かび上がり、簡単に缶が開く。
リビングにはふんわりとした紅茶の香りが広がっていた。




