奴隷はクソガキ。黒幕はクソオヤジ。
「俺の最高傑作が……あんなクソ野郎どもに汚された」
「そう思ったら……」
サイラスは思った以上に精神的なダメージを負っていた。
ヒロは頭を軽く掻いた。
「なら最終試験なんて……」
「……情が湧いた」
サイラスは小さく呟いた。
「こうしないと離れられなかった」
ヒロは目を丸くした。
サイラスがやっている事は最悪だったが、思った以上に親らしかった。
レオンは話が変わり始めたことに少々焦りながら口を開く。
「だが、お前はその後ノアを捨てて餓死寸前まで放置しただろ!」
「アルヴァルトが保護しなければノアは……」
サイラスは眉を寄せ、アルヴァルトを睨みつけた。
「餓死寸前?……アル!どう言う事だ」
「……私の過ちだよ」
珍しくアルヴァルトは肩を落とす。
ヒロとレオンは二度見した。
驚きを隠せなかった。
「本に書いてあったんだ……初めは二週間は放置しろとね」
「本?放置?」
「何故いきなり本が?」
意味が分からずに各々が口に出す。
「私の子供達は妻に任せっきりだったからね……家の図書室で事前に調べたのさ」
「犬の飼い方という本だったかな」
ヒロは静かに頭を抱えた。
突っ込む気にもならなかった。
レオンは腕を組んだ。
「犬はそんなに長期で放置するものなのか?」
「いや。水と餌は必要だったらしい」
「そこじゃねえ!というか当たり前だ!」
犬の飼育方法に興味津々のレオンと緩すぎる知識を放出するアルヴァルト。
ヒロのイライラは積み重なっていく。
ヒロ以上に憤慨する者がいた。
──サイラス。
我が子を犬扱いされ、餓死寸前まで放置された。
その事実だけでここにいる全員をやってしまいそうだった。
怒りで肩が震える。
「……義父さん」
「僕はその後、全信頼を向けていましたから間違いではないかと」
床に転がっていたノアはフラフラとソファに座り、何ともないように答える。
「いや間違いだろ!」
ヒロは声を荒げた。
「ノア!お前もっと怒れよ」
「別に怒ることは何もないけど……」
青い目は透き通ったまま、いつも通りヒロを映す。
ヒロは少しだけ胸が苦しくなった。
ノアはヒロの顔を見て、目を数回瞬かせる。
フッと口元を緩ませた。
「むしろ知れて良かった」
小さな声で呟いた。
「アルヴァルト……お前よくも……俺の最高傑作を!」
ついに怒りに狂うサイラスがアルヴァルトの胸ぐらを掴んだ。
アルヴァルトは依然として肩を落とし抵抗する様子もない。
「すまない。サイラス……君にもノアにも私は酷いことを……」
「僕のことは別にいいです」
ノアは横からそっと訂正する。
ヒロは深くため息をついた。
「お前ら……ズレてんだよ!」
「サイラス!まずはノアに謝罪だろ」
サイラスの眉がピクリと動く。
「何故、私が謝罪する必要がある?悪いのはアルヴァルトだろう!」
ヒロはビシッと指をさした。
「お前、子供の……ノアの気持ちを聞いたのか?」
「気持ち?感情論を持ち出すのか……これだから一般人は」
「大事なことだろ!」
ノアは言い合うヒロ達を横目にソファにゴロンと横になった。
「ヒロ〜帰る時になったら起こして」
「お前もだ!ノア!なんで今まで黙ってたんだよ!」
ノアは面倒そうに眉を寄せた。
「必要がないからだよ」
「お前の仲間だって心配してたろ!」
「……別に頼んでないし」
ヒロは舌打ちをした。
内心ブチギレていた。
「……お前ら親子だな!そっくりだよ……この臍曲がりども!」
ノアがソファから勢いよく立ち上がる。
「今のは聞き捨てならない!ヒロ訂正して」
サイラスも声を荒げる。
「目上の者に向かって臍曲がり!?お前こそ礼儀を知れ!」
言い合いが続く中、レオンはオロオロと介入するタイミングを伺っていた。
「んふっ♡動揺するレオンちゃんもカワイイわぁン」
エリザの推し活は捗っていた。




