クソガキの対処法はコチラ
リビングは食後の気怠い空気が流れていた。
すぐ帰ると言ったものの満腹で腰に根が生えていた。
「腹いっぱいだな……」
「ヒロ……僕、ここに泊めてもらう」
「……お前何しに来たんだよ」
エリザが小さなガラスの器を置いていく。
「お口直しにどうぞ♡」
「特製のレモンシャーベットよン♡」
淡い黄色のシャーベット。
中には刻まれたピールが混ぜ込まれている。
「これ好きなやつ」
ノアはスプーンを取り、口に運んだ。
レオンが眉を寄せた。
「お前、鎮痛剤で味分からないだろ」
「まあね。冷たいってのは分かる」
サイラスの目が大きく開いた。
「鎮痛剤?……エリアス、お前まだあの薬を……」
ノアはシャーベットに夢中だった。
呼ばれた気がして顔を上げ、首を傾げる。
眉を寄せたヒロがレオンを問い詰める。
「なんで鎮痛剤で味が関係するんだ?」
レオンはハッとした後、目線をあからさまに避けた。
「俺は知らな──」
「なんでもないよ」
ノアは何ともないように食事を続けた。
ヒロは眉を寄せる。
「おい!今の感じ……なんでもないわけが」
サイラスが急に立ち上がりノア側に座った。
「エリアス、顔を見せろ」
スプーンを咥えるノアの顔を押さえ込み、下瞼を引っ張る。
「えっ?なに?」
ノアは戸惑った声を上げる。
「口を開けろ」
ノアは何となく大人しく従う。
サイラスは小さく息を吐いた。
「あの薬は長期で服用するものではない」
「……もうやめておけ」
サイラスは手のひらを出した。
ノアは眉を寄せる。
「これは僕の──」
「それは俺とアルヴァルトで開発したものだ。使用権はこちらにある」
「これは義父さんから貰ったものだから渡せないね」
サイラスはアルヴァルトを睨みつけた。
アルヴァルトは静かに両手を上げた。
「ノア、サイラスに渡しなさい」
ノアはムッと口を尖らせた。
容器を取り、乱暴に手のひらに全ての錠剤を取り出す。
それを一気に口に入れた。
空っぽになった容器をポイっと投げるようにサイラスに渡した。
「……このガキ!」
サイラスはノアの頭を固定すると口の中に指を突っ込んだ。
ノアの嗚咽が響く。
「やめっ……出るっ!カレー出る!」
「おいおい……何してんだよ……」
ヒロは呆れたように目を細め、二人の親子を見守った。
激しい揉み合いの末、薬は無事回収された。
ぐったりとしたノアが床に転がる。
サイラスは手を清め、水気をタオルで拭き取った。
レオンは眉を寄せ、二人を見つめていた。
「食後にはキツイ映像だったな」
ヒロは何も言わずに深く頷いた。
サイラスがノアの背中に向け、遠慮がちに話しかける。
「おい、さっきのことだが……」
「……」
「俺がお前に銃を突きつけたのは……」
「別に気にしてない」
話す気のないノアの代わりにレオンが口を開いた。
「……お前は、暴漢のみならず幼いノアに銃を向け殺そうとしたんだろうが!」
「いや、そうだが……あの時は頭に血が昇って」
「ノアが暴漢を殺さなかったからか?」
「……違う」
サイラスは俯いた。
やけに真剣な表情のアルヴァルトが口を開く。
「言っただろう……サイラスにとって刺激的な光景になったと……」
ヒロはゴクリと喉を鳴らした。
「それって……まさか!」
「ああ。……未成年飲酒だよ」
「はあ?」
「ノアは当時五歳だったんだ……それなのに暴漢達と酒盛りをしていたんだよ」
ヒロは頭を押さえ天井を見上げる。
自分が想像したものとはかなり違っていた。
それが果たして良かったのか判断できなかった。
「……そっか」
ヒロは一言だけ呟いた。




