ご主人様は頑固すぎる!
「……だから僕はサイラスの取り戻す対象じゃない」
静まる部屋。
ユーミルが髪の毛をくるくると指に巻く。
「今の話だけでは早計すぎるんじゃないかな?」
「そう?」
ノアは何ともないようにティーカップの縁を指でなぞる。
「それか、あの日の続きをしたいのかもね」
「……僕を殺したい、とか」
ユーミルは小さく息を吐いた。
「ノア、君らしくないね。感傷に浸るのは悪いことではないけど、判断を鈍らせるよ」
ノアは口を閉ざした。
「まあ大体は分かったよ。君が逃げていた理由もね」
「ただ、引っかかるのはレオン……なぜ君はこの話をさせたがらないの?」
足を引き摺るレオンの肩がビクッと跳ねた。
「お、俺は言わないぞ!」
ノアは小さく息を吐いた。
ユーミルはレオンからノアへ視線を移す。
「ノアとレオンは次の作戦から外れてくれないかな」
マキシムが立ち上がり、声を荒げる。
「……何言ってんだよ!ノアは負傷してっけどよ。レオンがいないと戦闘力が」
「僕たちは、すでに拠点を失っている。個人の感情だけで振り回されるのはごめんだよ」
「たしかに俺の家……」
「あんたの家じゃないっての」
ステラが呆れたようにマキシムにツッコむ。
「非戦闘員の僕たちも全く戦えないわけじゃない」
ユーミルは立ち上がる。
「僕たちでエクリプス拠点奪還作戦を決行する」
「……だからサイラスは君に任せるよ。ノア」
ユーミルは目を細め、微笑んだ。
ノアは少しだけ目を見開くと、喉を動かした。
ユーミルは他の面々を席から立つように促し、部屋を出て行った。
残されたヒロはアルヴァルトに声をかけた。
「なんか、あのユーミルってヤツ良い人だな」
「やはり彼が欲しいね」
「いや、そうじゃなくて」
「義父さん、ユーミルはあげませんよ。僕の後継ですから」
ノアは眉を下げて笑った。
「後継って……お前のが、たぶん若いだろ」
ヒロはノアを不思議そうに見つめた。
「それで、サイラスはどうすんだ?」
「僕一人で会いに行くよ」
「はあ?」
「サイラスの奪い返すものが分からないままだからね」
ヒロは立ち上がるとノアの肩を掴んだ。
「お前、怪我してんだろ!」
「薬飲んでるから痛くないし」
「そうじゃねえよ!」
ヒロはノアの目を真っ直ぐ見つめた。
「これは命令だ。一人では行くな」
「……じゃあ」
ノアはレオンを見つめる。
眉を寄せ、小さく息を吐いた。
「レオンとならいい?」
レオンは痺れた足を引き摺りながらテーブルに向かう。
ヒロはレオンから目を逸らした。
「だめだ。……俺も行く」
「それはこちらが許可できない」
「なら俺もお前を行かせない!」
眉を寄せ睨み合う二人。
アルヴァルトはフッと息を漏らした。
「ノア、君の主人はとても頑固者のようだね」
「……義父さん」
「私も行こう。久しぶりに元契約者の顔を拝みたくなったよ」
頬を上げ楽しそうに笑う。
ノアは大きく息を吐いた。
「戦闘するつもりはなかったんだけどな……」
小さく呟いた。
「決まりだな」
ヒロが軽く服を整える。
「それで、サイラスはどこにいるんだ?」
ヒロの背中にゴツゴツとした硬いものが触れる。
「……私の家よン♡」
耳元に息がかかる。
ヒロはビクッと飛び跳ねた。
「エ、エリザの家!?何でだよ!」
「私の新しいダーリンがサイラスなの♡」
「はあ?」
ノアはじっとエリザを見つめ、首を傾げる。
「母さん……?」
「あ〜ン♡」
「やめろぉ!」
ヒロは嫌な汗をかいていた。




